国際金融危機の嵐が吹き荒れる中、多くの企業が市場の縮小、時価総額の目減り、資金繰りの困難といった痛みに直面している。こうした状況は、客観的にみれば企業の合併買収(M&A)の条件作りをするものだといえる。最近伝えられた日本のパナソニック株式会社による三洋電機株式会社の買収のニュースは、2008年末の多国籍企業による買収案件としては最大のものだった。この買収が金融危機下における世界企業の買収戦スタートの口火を切ったともいえそうだ。
パナソニックは今後1千億元(約64億ドル)を拠出し、1株131円(1ドルは約89円)で米国のゴールドマンサックス、日本の大和証券、三井住友銀行が保有する三洋株を買い取り、来年3月には三洋を傘下におさめる予定だ。
買収が成功すれば、パナソニックの規模は北欧系のエレクトロラックスを一挙に追い越し、米国のワールプールに次ぐ世界2位の家電メーカーに躍進する。三洋を買収することで、パナソニックの眼前には無限の発展空間が広がることになるとみられる。
だが買収は2つの多国籍企業が繰り広げる再編劇の始まりに過ぎない。今後の道のりはとても長く、前途には険しい困難が横たわる。企業の大規模化ということを考えれば、M&Aは企業が新たな段階に足を踏み入れるのを迅速に、かつ効率よく促進し、大きなチャンスをもたらすが、大きなリスクをももたらすものだ。一般的にいって、買収合併される側の規模が大きければ大きいほど、将来的なリスクが増大する。双方が「鬼ごっこ式」に駆け引きを駆使して事を進めれば、再編への道のりはより容易なものになる。だがパナソニックの三洋買収で演じられたのは「巨象が巨象を飲み込む式」の大企業同士の攻防戦だった。巨大な象もバラバラに切り刻み一口サイズにすれば食べることができる。時間はかかるが、パナソニックは三洋という巨象を消化し終え、栄養を吸収して、自身の糧にすることができる。当面の問題は、両社の再編劇が十分な検討を踏まえていない「ナツメの丸飲み込み式」であることだ。よって、今回の買収がパナソニックにとって吉と出るか凶と出るかはまだわからない。
当然のことだが、パナソニックと三洋のトップは、今回の買収劇をそれぞれのニーズに合致し、双方に利益があるものととらえ、うきうきした祝賀ムードに浸っている。だが業界ウォッチャーは今回の大企業同士のM&Aを高く評価しない。最近の多くの多国籍企業のM&A案件からうかがえるのは、大企業による大企業の買収の成功率は低いということだ。パナソニックの三洋買収が新たなM&A失敗事例の始まりでないとは言い切れない。
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