北京政府は、2005~2008年まで、医療や教育、社会保障面での支出を倍にするなどの措置をとっている。しかし投資総額は対GDP比でわずか6%で、経済協力国際機構(OECD)加盟国の平均は25%である。政府は今年、低所得家庭の年金のカバー範囲と金額を拡大した。同時に、2011年までに総人口の90%に基本医療保障を提供することを計画しているが、新たな支出は年間GDPの0.5%にも満たない。これらの措置により家庭の将来の医療費に対する懸念が和らげば、貯蓄は減少するだろう。しかし消費者行為に影響を与えるにはまだ数年がかかる。
さらに重要なのは、福利が不十分なことと、消費の対GDP比がなぜ低下しているかを十分に説明することができないことである。まず、国有企業の改革後、多くの労働者は10年前には国が提供する医療と教育を受けていないため、これは中国の貯蓄が最近になっても上昇していることを説明することはできない。世界銀行北京事務所のエコノミストであるルイ・クェジス氏は、多くの貯蓄は収入のアンバランスが原因となっていると話す。裕福な人の貯蓄は多く、さらにその額も増えている。
2つ目に、都市家庭の貯蓄は多いが、農村家庭は過去10年で以前のように倹約しなくなった。結果的に、家庭貯蓄率の平均は安定的に上昇している。クェジス氏の計算によると、家庭の貯蓄総額は1998年は対GDP比で21%だったのが2008年には24%まで上昇している。家庭貯蓄が同時期の国民貯蓄伸び率に占める割合は5分の1にすぎず、多くの銀行の預金の増加は企業によるものであることがわかる。
これには2つの原因がある。1つ目は、貯蓄が非常に多い人がいるとすればそれは企業で、家庭ではないこと。2つ目は、他の場所から中国の消費の割合が低下している原因を見つける必要があること。過去10年間、消費の対GDP比の下げ幅は、家庭貯蓄の上げ幅の約4倍だった。
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