中国はどうすべきか
中国としては、人民元為替レートを安定させることを目指すべきである。なぜかと言えば、実体経済の成長に力を注ぐことが、中国の経済成長を持続させるための基本的な姿勢となるからである。実体経済の成長がなければ、サービス業、金融業なども成り立たない。
現時点で中国が本当に注力すべきことは、技術水準を向上させ、人的資本を充実させるための実質的投資である。これに関しては日本の経験と教訓を参考にすることができる。
またアメリカによる措置を予期し、事前に準備することも必要となる。過去の事例を振り返れば、他国通貨への切り上げ要求に伴って行われると思われる措置は貿易制裁である。罰金的意味合いの関税を徴収したり、第三国と協力して圧力を加えたりすることが考えられる。これらに対し中国は落ちついて対応することが求められる。関税の引き上げは、各国の比較優位、産業の国際的分業や各国間の貿易構造を変えることはできない。関税引き上げによるコスト上昇分は消費者と生産者の双方によって分担され、その負担比率も商品ごとの事情に合わせて柔軟に設定されるだろう。中国は安定した為替レートさえ維持できれば良いのであって、個々の企業の経営方策は企業それぞれに任せれば良い。企業は個別に値上げ等の方法で対処することもできる。
国際通貨としてのアメリカドルの地位を守ることがアメリカにとって最も重要なことである。そのため、中国にとって時機を見てアメリカ国債を投げ売りすることも1つの手段である。中国はまた、人民元の国際的地位を確保するために、戦略的にユーロとアメリカドルが拮抗するように仕向けるべきだろう。
また、為替レートの安定維持は決して中国政府が何もしなくても良いということを意味していない。中国は外国為替管理制度を改革し、企業や個人への外貨保有規制を緩和すべきである。これは、インフレ観測の後退にプラスとなるだけでなく、民間経済を主体とした理性的な対応により、貿易不均衡問題の緩和に寄与することができるのである。
(筆者:元商務部副部長・現中国国際経済交流センター秘書長 魏建国)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年3月29日