金融危機のもとで米国人の豪快な散財の時代は終わり、世界の目はアジアに、特に中国に転じつつある。だが人々は大きな失望を味わっている。アジア人、特に中国人は、生産や投資に忙しいだけで、消費大国の看板をいっこうに背負おうとしないし、世界の生産力を受け入れる場所になろうともしない、と。こうして今、グローバル経済の新しいバランスをどのように取っていくのかが、新たな懸念となって浮上している。研究分野の話題は「中国人はなぜ消費しないのか」だ。
これまで多くの論者が、東アジア地域は文化的な影響により、質素倹約を重んじ、贅沢を恥としており、このことが財布のひもをゆるませない原因だと指摘してきた。また別の論者は、中国の社会保障体制は不完全で、人々が将来の不安を抱いていることから、貯金していざというときに備えようという心理が働くのは当然だと指摘する。このたび開催された博鰲(ボアオ)アジアフォーラムでは、重要級の研究者の多くが「中国人の消費不足は、懐が寂しいのが原因だ」と相次いで指摘した。
過去10年間、中国は国民消費を引き上げようと努力し、さまざまな消費刺激策が相次いで打ち出されてきた。だが国内総生産(GDP)に占める消費の割合は年々低下し、現在では36%となり、1990年から累計約15%低下したことになる。これと呼応するように貯蓄率は上昇を続け、1996年の36%から2007年は51%に上昇した。