文=中国社会科学院金融研究所金融市場研究室副主任の尹中立氏
米国金融危機の世界経済への影響が徐々に縮小し、経済回復の兆候が鮮明になりつつある中、今度は欧州発端の債務危機が持ち上がった。2010年2月初旬からギリシャの債務危機と足並みを合わせるように、世界金融市場は再び不安定な状態に陥っている。ユーロが大きく下落した一方で米ドルは徐々に値を上げ、米ドル指数は70余りから一息に90以上にまで上昇した。ユーロ対ドルの為替レートは1.45:1程度から1.2:1まで急落した。この影響で、2月初旬以降の株式市場は世界的に浮き沈み激しく推移している。
欧州債務危機の影響を受け、中国国内のマクロ経済政策、特に不動産調整政策が調整を迫られている。しかし多くの専門家が、国際情勢が先行き不透明なうちは、手緩い通貨政策と積極的な財政政策を続けるべきだと考えている。即ち、マクロ刺激政策は早々と撤回しない方が無難だとの見方である。
実際、中国にとって欧州債務危機は悪い側面ばかりではない。適切に対応すれば、将来に繋がる重要な契機となると考えられる。この時期にとるべきはマクロ経済政策の引き締めであって、拡大ではない。
輸出に目を向ければ、EUは中国にとって最大の貿易相手であり、欧州での危機勃発は必然的に中国の輸出減少に繋がる。欧州の危機が中国の輸出に影響が及ぶのは、次の二つの要因からである。一つは欧州における需要減退、もう一つは、ユーロ・英ポンドに対して中国元が大幅に為替相場を上げたことによる中国製品の競争力低下である。従って、貨幣政策による緊縮措置をとれば、企業の倒産を後押しする結果になることが懸念される。