当然のことながら、これは深いレベルで中国に非常に豊かで肥沃なファストファッション成長の土壌があることを示してもいる。とはいえ、ZARAやH&Mが中国でハイペースな出店を続けるのにともない、中国独自のファストファッション業態は姿を現し、発展しているだろうか。ZARAが来て、H&Mが来たことで、ファストファッションは出そろったのだろうか。
実際、ファストファッションには4つの核心がある。スピード、流行、低価格、少量限定だ。大陸部のアパレル企業にとって、価格という要因は基本的に存在しない。ファストファッションの代表の一つであるユニクロが、中国系のバレノやジョルダノに負けたことがその証拠だ。だが問題のポイントは、国内の少なくないアパレルブランドがZARAとH&Mを模倣しようとして、表現スタイルを真似るケースが多いということだ。広い面積に店舗を借り、一流のスタッフに店舗の内装を任せるといったやり方だ。だが一流のイメージを確立するだけの十分な資金があるのだろうか。二流の製品を三流の価格で売って利益を上げるだけの能力があるのだろうか。ファストファッションが要求するスピードを維持しつつ消費者、デザイン、生産、物流を把握し続ける力があるのだろうか。ファストファッションという業態に必要なのは一つのシステムであること、大規模な情報システムや大量の原材料の備蓄、資金的支援といったさまざまな要因を含んだ一つのシステムであることを理解しなければならない。実のところ国内には早くからファストファッションという業態は存在していた。広州市で最も有名なファッション製品卸売市場はそのよい例だ。それではなぜZARAやH&Mのようなブランドが誕生しなかったかというところに、問題の所在がある。とはいえ、国内ブランドを過剰に責め立てる必要はない。海外にもファストファッションを名乗りながら、実際には羊頭狗肉のブランドが数多くある。
隆盛を誇るファストファッションだが、中国での発展は続くだろうか。ファストファッションが中国に登場した今、消費者はそれに慣れてしまい、かつての消費モデルに戻ろうと思っても、もはやそれはかなわない。だが見逃せない現象もある。ますます多くのぜいたく品ブランドが中国市場への進出を加速していることだ。カルティエは先月、華南地区で3店舗を新たにオープンし、セリーヌは上海に新店舗をオープンさせたばかりだ。こうしたファストファッションとは異なる内実を備えたブランドも、また一つの業態として中国に進出していくとみられる。実際、市場は混乱しておらず、ここから中国市場の大きさや消費層の厚さがよくうかがえる。多くの人はファストファッションが中国でこれほど受け入れられると予想していなかった、というだけのことだ。
「人民網日本語版」2010年6月7日