スウェーデンで誕生した欧州最大のファッションブランドH&Mは先月20日、広東省広州での初の旗艦店をオープンした。当日は大勢のH&Mファンが押し寄せ、開店の2時間前から行列を作り、会社を休んで来たという人もいた。ピーク時には入店まで1時間待ちとなり、レジも約40分待ちとなった。興味深いのは、H&Mのオープン時には中国のどの都市でも「行列に並び、争って買い物をする」という同じような光景が繰り広げられることだ。H&Mは中国の消費者がほしがっている商品をずばりと提供する。中国価格で国際ブランド、という商品だ。熱烈歓迎ぶりをみせる市場の反応を受けて、H&Mは非常に速いペースで中国事業を拡大している。店舗の増加ペースは世界規模では毎年10-15%だが、中国ではこれをはるかに上回るペースで増加している。昨年は中国で13店がオープンし、今回の広州旗艦店を入れればH&Mの中国店舗は30店になる。
日本のユニクロも中国市場でさらに猛烈な勢いをみせている。香港地区を含む中国での店舗数は現在65店に達し、2012財政年度以降は毎年100店舗以上をオープンして、109億元の売上達成を目指すという。
よくいわれるように、ファストファッションが歓迎されるのは、その商品が世界の大手ブランド製品のように見えるからだ。ZARAやH&Mを着ると、シャネルやグッチを着ているように見える。もう少し専門的にいえば、ファストファッションという業態は低価格・少量生産という戦略を採用して、ミドル-ローエンド価格でハイエンドなファッション製品を消費者の手元に届け、消費者に少ない支出で高い価値を手に入れたと思われる。これは消費レベルの上昇期にある中国市場に非常に合致したビジネスモデルだ。
ファストファッションは中国で大手を振って歩いている。そこでより大胆に深く考察してみると、中国人のファッション観に対するファッション業界のとらえ方という点にまで考えが及ぶ。ファストファッションが体現しているのは表面的な流行だ。ファッションへの理解やブランドの内実に対して浅い理解しかない段階には、人々の消費行動における忠誠度(ロイヤリティー)は往々にして低く、消費は表面的で素早いのが特徴だ。流行についていえば、ファストファッションで消費するのはブランドではなく商品だ。こういう言い方は厳しいかもしれないが、確かに一理はある。シャネルのカメリアのモチーフが何を表すのか本当に理解している人は、ZARAやH&Mで同じような花のマークが入った商品を買うことは決してない。