(6)投資による牽引と雇用の拡大
危機下にあって、国の伝統的な鉄道・公共施設・インフラ施設分野への投資は、経済の急速な回復を牽引することはするが、こうした分野では大量の雇用が生まれず、現在の中国の経済・社会発展における雇用拡大ニーズとは全く合致しない。長期的にみて、成長の維持と構造の調整という二つの目標の下で、雇用の拡大と投資による牽引という方向性を選択する場合、引き続き難しいバランスを取ることが求められる。
(7)地方の債務問題解決における進と退
政策決定部門は地方の投融資プラットフォームの債務に対する規範化実施プロセスにおいて、こうしたプラットフォームがこれまで展開してきた相当数の長期投資プロジェクトの持続可能性の問題を考慮する。資金面で支援するプロジェクトについては、投資を継続するかどうかの政策決定において、進むべきか退くべきかの判断の基準が失われている。地方の債務問題は新しい財産権・職権の区分や分税制改革を頓挫させる可能性もある。
(8)資源価格改革とインフレの管理
経済の持続可能な発展が要求する経済要因には、その希少性が反映され、市場価値が反映される。エネルギー価格改革には科学的な発展観に基づく重要な経済的含意がある。今年の政府活動報告の中で、消費者物価指数(CPI)の約3%の上昇に言及したのは、資源環境をめぐる税費目改革や資源製品の価格改革に一定の余地を残すためだ。エネルギー資源価格の改革が直面するマクロ経済的背景は、単純なものではなく、より複雑さを増しているものだといえる。
(9)短期的な政策決定と長期的な計画
経済発展のモデル転換が、長期にわたる政府主導の戦略的プロジェクトであり、短期的なマクロ経済政策と長期的な戦略計画との間に一連の衝突をもたらすことは必然だ。これは実のところ、多くの「両難問題」を発生させる重要な背景要因でもある。
(10)省エネ・汚染物資排出削減と重化学工業の発展
重化学工業が中国経済で重要な位置を占めているという現実を踏まえ、中国経済の復興の重点を重化学工業分野の投資・発展に置くことは、長期的な産業調整の方向性と一致しない。また重化学工業と省エネ・環境保護との間の衝突が長期にわたる可能性もある。省エネ・汚染物質排出削減の二つの道、すなわち技術的な排出削減と構造的な排出削減とを実現するには、一定の時間が必要であり、今現実にある圧力との衝突は免れない。
(11)土地の商業化と耕作地の保護
地方政府は土地価格の急速な上昇を受けて、土地に大量に投資して、地方の土地譲渡金と関連の不動産収入を大幅に増やしたい考えだ。中央政府は都市化プロセスによる農業用耕作地の極端な減少を防ぎ、不動産の発展と農業との関係がバランスを取ることを願っており、ここに土地市場の調整をめぐって中央と地方との間に衝突が生じることになる。
(12)緩やかな通貨政策と資産バブルの防止
実体経済の喚起というニーズを考えれば、適度に緩和された通貨政策の継続が必須だが、流動性が資本市場や不動産市場に大量に流入すれば、資産価格の暴騰と不動産バブルのリスクが高まることになる。
「人民網日本語版」2010年6月9日