米国とドイツ、財政赤字で意見が対立
G20サミットでは、米国とドイツが真っ向から対立する財政主張を繰り広げた。
欧州の債務危機対応の中で統一戦線を張っているドイツとフランスは、引き締め政策をとって財政赤字を削減し、公共財政を強固にすべきだと主張した。
メルケル独首相は、欧州諸国が必要としているのはファンダメンタルズに基づく成長であり、負債を基礎とした成長ではないと強調した。
ショイブレ独財務相も、かつて多大な赤字が経済成長に有利であった例はないと強調。財政赤字のもたらす不安要素はドイツの消費と投資の成長の最大の脅威となっていると主張した。
一方、オバマ米大統領は、G20サミットの最大の優先事項は、世界経済の回復を守り、促進することであると強調。欧州諸国は焦って過度な引き締め政策を行わないように呼びかけ、こうした方法によって世界経済の成長が損なわれ、就業市場の回復に影響が出ることに懸念を示した。
ガイトナー米財務長官とサマーズ米国家経済会議委員長も、G20は世界経済の成長を確保することが最も重要であり、長期的な赤字削減によって短期的な成長を犠牲にしてはならないとの意見を示した。
フランスパリ大学のミシェル・アグリエッタ教授は、米欧の意見の相違はケインズ主義と重商主義の争いであると指摘。「世界経済の回復がまだ脆弱である中、米国はケインズ経済理論を運用して拡張的な経済政策をとり、財政赤字や需要増加を通して経済成長を促したいと願っている。彼らは目下の経済発展の状況では財政引き締めの結果を消化することは難しいと考えている。一方、ドイツは人口高齢化などの国内問題で内需が落ち込むことを懸念しているため、重商主義の考えをもとに自国の経済競争力を強化し、貿易によって黒字を累積したいと考えている。この二つの主義の争いの結果、国際経済の不均衡はより一層拡大するだろう」