「産・学・官」が一体となった新しい改革体制
EUの統計によると、2006年の日本における研究開発費はGDPの3.39%だったが、うち企業による研究開発費が2.6%を占め、政府によるものはたったの0.55%だった。欧米で政府が技術革新の主導的役割を果たすのとは異なり、日本では企業が技術革新の主役なのである。
日本の建設会社を例にとると、大手建築会社はみな自前の研究所を持ち、高性能熱ポンプ・太陽光発電・住宅空調管理システムなど数多くのエネルギー効率向上・二酸化炭素低減の技術について研究を行っている。それら研究所の研究内容や試験設備はみな世界一流の水準である。
2008年、日本経済産業省(略称:経産省)は低炭素技術革新の重点技術として21項目を指定した。これら技術の選定にあたっては、次の三点が基準とされた。第一に、世界規模で二酸化炭素排出を大幅削減できる技術であること。第二は、日本が世界を先導する立場にある技術であること。最後に、既存技術に対して材料の革新と製造工程の改善をもたらすものであること。例えば、ケイ素よりもコストが安く、低炭素の新材料としての太陽エネルギー電池である。
「日本政府は専門の研究制度を設け、産業界と学術界による研究開発とその研究成果の商業化に関して資金援助をしている」と三井物産株式会社環境事業部部長の稲室昌也氏はインタビューの中で述べる。
学術界と産業界の研究開発の協力体制を固め、研究成果を転化しようと、日本政府は毎年、大学・企業共同の研究開発プロジェクトの入札活動を行い、プロジェクトに資金提供をしている。例えば、先の21項目の技術革新を推進する方針を打ち出したあと間を置かずして、経産省は大学・企業共同の低炭素技術研究開発プロジェクトに関する公開入札を行い、政府から5000万ドルが選定されたプロジェクトそれぞれに資金提供されている。
また、日本政府は研究開発の成果を商業化するための資金提供も惜しまない。昨年、環境省は全国規模で「三年以内に商業化可能な二酸化炭素排出低減技術」を募集し、合格したプロジェクトに多額の資金援助を行っている。