日本の政府と企業は中国人消費者に対して全方位的な攻勢をかけている。中国人観光客に対する査証発給要件を緩和したこと、中国からの投資を誘致していること、中国市場のさらなる発掘を試みていることなど、いずれも中国市場という「宝の山」をものにするための取り組みだ。では中国市場はここから一体何を得るのだろうか。「国際商報」が伝えた。
▽企業の大権をビジネスチャンスに換える
中国市場という「肥沃な地」を獲得するために、日本の政府・企業はあらゆる手だてを尽くし始めた。ねらいはただ一つ。中国人消費者の財布に的を絞っている。
中国人観光客を受け入れると同時に、日本は中国資本の誘致も忘れていない。最近、対日投資や日本企業の合併買収(M&A)を計画する中国企業は、明らかに驚くような優遇を受けている印象がある。友好的で熱意ある投資ムードもただよい、中日企業の「結婚」が促進されている。調査会社ディール・ロジックがまとめた資料によると、今年上半期に行われた中日企業間のM&A取引は18件に上り、09年全体の水準に到達した。
日本人はなぜ企業経営の大権を中国に引き渡すのか。あるアナリストがずばり述べたところによると、これは中国市場というパイを獲得するためだという。みずほ証券株式会社M&A部門の責任者・花村信也氏によると、日本企業は中国人投資家に対して徐々に友好的になっている。原因の一つは、日本の国内市場が縮小し、株式市場が停滞し始めたことにある。米国や欧州にとって、中国はより吸引力のある市場になりつつある。もしも中国資本企業が、ますます豊かになる中国人に日本人が製品を販売するのを助けられるのであれば、外国人(日本人)が保有する本国企業の所有権を他人(中国人)に譲渡することも一層容易になる。
▽「金鉱」を求めて中国へ大挙
中国で海外資本導入の新しい攻略方法が打ち出されると、日本企業は海外進出して中国での「金鉱」探しに躍起になった。
注目すべき動向として、日本が中国の一線都市で新たに行う投資は、その大部分がサービス業に集中していることが挙げられる。製造業からスタートした日立製作所は業務分野を情報技術(IT)コンサルティングに拡大し、今月1日には日立中国法人と共同でコンサルティング会社・日立諮詢(中国)を設立し、従来の商品を売るスタイルだけでなくサービスを売るスタイルへと業務を拡大した。新会社の陳玲生総経理(社長)によると、中国は世界でIT産業が最も急速に発展している国の一つであり、新会社はIT分野での経営の経験や日立グループの企業経営の経験などを大陸部市場のニーズに結びつけて、中国の顧客に専門的で効果的なIT業務コンサルティングサービスを提供することを目指すという。
日本の成長産業であるスーパー銭湯も中国人の財布をねらっている。ある報道によると、日本最大のスーパー銭湯チェーン・極楽湯は、中国に日本風のスーパー銭湯を建設する計画を立てており、1店あたりの規模は日本の4倍から6倍に達する予定だ。
中国社会科学院(社会科学アカデミー)の日本経済専門家・張季風氏によると、日本企業による一連の措置は、中国市場が日本にとって極めて重要であることを表しているという。税関総署がこのほど発表した上半期の中国対外貿易統計データもこうした見方を裏付ける。同統計によると、上半期の中日二国間貿易額は1365億5千万ドルに達して前年同期比37%増加し、中国の対日貿易赤字は263億3千万ドルで前年同期の2.3倍に増加した。
張氏によると、日本経済が長期にわたり低迷していることの根本的な原因は、国内市場がすでに飽和状態にあり、経済発展のエネルギーが不足していることにあるという。海外市場の開拓が日本が低迷から抜け出すための本道であり、ここから中国が世界で成長が最も早い消費市場として重要な位置を占めていることがうかがえる。中国の市場ニーズは日本の経済を牽引し、過剰な生産能力を消化するという役割を果たしており、何者もこれに代わることはできない。
張氏によると、中日の経済関係がますます緊密化することは、双方にとって好都合だという。日本企業が中国消費市場の開拓に力を入れていることは、中国大陸部の企業のシェアを奪おうとするものだと単純に見なすことはできない。実のところ、これはかえって中国の内需拡大にプラスになる。張氏は「中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以来の事実が証明するように、多くの懸念は杞憂だった。中国市場は巨大であり、開放がもたらしたものは良性の競争で、大陸部企業への打撃ではなかった。日本企業には管理や営業で豊富な経験があり、中国企業は大いに学ぶべきだ。秩序ある良性の競争がもたらすものは、業界の進歩と市場の繁栄であろうし、これは中国の構造調整や消費の促進にとって積極的な作用をもたらすといえる」と話す。
「人民網日本語版」2010年7月14日