今年上半期に発生した「富士康事件」は、中国東部沿海地域の発展が、すでに飽和状態になっていることを示している。コスト上昇や収益低下により多くの企業が内陸部へと移転し、中国経済は東部沿海地域から中西部へと重心を移しつつある。
中西部地域には、労働力資源、生産要素(土地の借賃や水道、電気料金)、政策優遇、豊かな鉱物資源が十分にある。輸送ネットワークが整備されるにつれ、東部から中西部への輸送コストも考える必要がなくなった。それに中西部には巨大な消費市場が隠れている。東部沿海地区は最盛期の10年を過ぎ、商品不足という時代から過剰という時代に入ったが、車とクーラーを持っている西部の人たちの数は、東部の人の半数にも及ばない。また文化や経済の関連から考え、多くの企業は東南アジアよりも内陸への移転を望んでいる。こうした企業の多くが低価格品の加工労働が集中している企業だ。
企業の内陸移転は、中国の産業構造の転換を促し、中国経済の一体化や内循環システムの形成を促して、中国経済の持続した繁栄を導くだろう。そして多くの窮地に陥っている低価格の労働集約型の加工企業も生き延びることができ、東部沿海都市もハイエンド製品の産業に専念して、大規模なハイテク産業の育成を加速することができる。
中西部からすれば、東部の企業が移転してくることで、今後は最盛期の10年間を迎えることになるだろう。資本や技術、管理理念が「移転」し、政策上の優遇策も加わり、中国の次の投資の成長分野になって、中国経済の第二波、第三波の発展の高まりを誘発するだろう。また地元では大量の労働力が受け入れられ、この数十年の出稼ぎ労働者の帰省も終了して、東部と中西部の格差も徐々になくなっていくだろう。
中国にとって企業の内陸移転は、経済の内部循環システムの形成を促し、経済一体化の発展を加速する。そして東部と西部の経済発展を集中化させ、長期にわたる輸出への依存から脱出できる。これからの中国経済の成長は、主に中国企業と中国自身の需要で決まり、多国籍企業の役割が弱くなっていくに違いない。
世界の研究開発と資本は欧米に集中している。だが投資利益という点から見れば、発展途上国には十分な労働力資源がある。資本は先進国から途上国へと移り、まず日本、そしてアジアNIES、それに続いて中国沿海部へと、これは豊かになる道だった。今の中国企業の内陸移転も東部から西部への資本移転であり、中西部の発展をけん引するだろう。中国沿海地域の工業化は、中国史上最大規模の貧困脱出と経済繁栄であり、その第二幕がもうすぐ始まる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年8月16日