同じく中国の自動車大手、吉林汽車も年初に、同社が蘭州(甘粛省)に持つ工場の規模拡大を決定した。第1期工事で改造、第2期工事では規模拡張を行い、生産能力を現在の5万台から12万台まで引き上げる計画。それにより、ユーラシア大陸横断鉄道の沿線各国に向けた輸出の足がかりを築く狙いだ。同社の責任者によると、2015年までに吉利汽車の生産能力は200万台となり、海外に15の生産拠点を建設する見通しという。
合弁企業や外資系企業も遅れを取ってはいない。米自動車大手フォード・モーターは、生産能力の向上こそが今最も肝心な問題との認識を示している。トヨタ自動車も引き続き規模拡張を進めている。トヨタが出資する合弁会社、一汽トヨタは今年5月、約36億元(約450億円)を投資して四川省に工場を新設した。これで中国におけるトヨタの生産能力は82万台程度に増加した。さらに報道によると、トヨタは長春市(吉林省)で約38億元(約470億円)規模の新工場建設プロジェクトを再開するとしており、2012年上半期に使用を開始する計画という。そうなればさらに10万台の増産が見込まれる。
今年6月、上海 GM、上海汽車集団(SAIC)、五菱汽車(Wuling Motors)による合弁企業である上汽通用五菱(SGMW)も工場拡張を行った。当時の報道によると、北部地域における生産の要である同社の青島支社が第2期拡張プロジェクトを開始した。2011年末までに完成する予定で、年間生産能力は現在の30万台から51万台へと70%以上の増加が見込まれるという。
これに先立つ5月、ホンダが出資する合弁会社、広州ホンダも生産能力を現在の年間12万台から24万台に引き上げる計画を発表していた。2011年下半期に工事が完了し、中国におけるホンダの生産能力は年間48万台に達する見通しだ。
こうした工場拡張が繰り返されれば、生産能力の過剰が現実化することは必至だ。2009年、自動車業界における生産能力の利用率は80%で、合理的な数値に留まっている。しかし2012年以降は生産能力が国内需要をはるかに上回るとみられる。このまま政策的措置を講じなければ、利用率は向こう数年で低下が始まり、深刻な場合は70%を割り込む恐れもある。そうなれば深刻な能力過剰が現実のものとなる。