これはもちろん悪いことではない。四川省資陽市出身の呉丁麗さん(24、仮名)は以前、広東省東莞市のある小さな電子製品工場で5年間働いていたが、2008年のグローバル金融危機で仕事を失った。それから1年後に重慶市にあるヒューレット・パッカード向けの電子ケーブルを生産する工場で再就職した。呉さんによると、今もらっている賃金は前より少ないが、実家から近い重慶市での生活は自分にとって広東省での生活よりもずっと快適であり、前の仕事より今の仕事の方がいいという。
中国の賃金上昇が引き起こした最も重要な作用は、人々のポケットにある金がより多くなったということだ。これはすべての人の利益に合致することであり、とりわけ中国の主要貿易パートナーの利益に合致する。貿易パートナーたちは中国の消費が増加して、国際貿易における巨大なアンバランスが軽減されることを切実に望んでいる。賃金上昇は輸出業者や各産業の中国企業に影響を与える可能性があるが、これは中国がより堅実な通貨をもち、より豊かな国に成長するプロセスでは避けられない結果だといえる。米国のあるエコノミストは「これは必然的に生じることだ」と話す。
多くの多国籍企業は早くから中国での生産の照準を広大な中国市場に定めてきた。ヒューレット・パッカードの重慶工場は、中国国内市場向けのノートパソコンだけを生産している。華南米国商会が8年前に行った調査では、会員企業の75%が輸出市場を主なターゲットにすると回答したが、昨年の調査ではこの数字に大きな変化が生じ、75%が中国での生産は主に中国市場に製品を供給するためと回答した。これはまさしく中国人が徐々に豊かになってきていることの現れだ。
「人民網日本語版」2011年6月21日