米スポーツ用品大手のナイキがこのほど発表した2011年第4四半期決算には、世界各地にある生産拠点のシェアは示されていなかった。しかし、あるメディアは昨日、「2010年に中国に取って代わりナイキにとって世界最大の生産拠点となったベトナムは、2011年もその地位を守ることになるだろう」との予測を発表した。
中国で人件費が上昇するに伴い、多くのメーカーが東南アジアなど人件費の低い国に生産拠点を移すようになった。一方で、多くの外資系企業が研究センターを中国に移すなどの動きを見せている。
人件費上昇による変化
2010年から「ベトナム製」の文字が、中国で販売されているナイキの靴で多く見られるようになった。
ナイキは海外の業者にスニーカーの生産を委託している。2010年までは、中国はその最大の生産国であったが、2010年以降、ベトナムが中国からトップの座を奪った。ナイキのデータをみると、2001年の時点で、中国はスニーカー生産シェアの40%を占め、世界1位だった。一方、ベトナムは13%を占めるにすぎなかった。2005年になると、中国のシェアは36%にまで落ち、一方、ベトナムはシェアを26%にまで伸ばし、世界2位となった。2009年、中国とベトナムのシェアは36%で並び、2010年に、中国はベトナムに抜かれることとなった。
ナイキは、スニーカーの生産にとって人件費は重要な要因であり、競争力を保つためには、人件費を24%以内に抑えなければならないとしている。過去30年間、ナイキは各地のコストの変化に応じて、生産拠点を次々と移した。最初は日本で生産していたが、人件費の上昇にともない、生産拠点を韓国と台湾省に移し、その後は、フィリピン、タイ、マレーシア、香港に移行した。中国に生産拠点ができたのは1981年のことである。
「長年以来、人件費の安さが中国の特徴だった。しかし、最近は、人民元の切り上げ、インフレの拡大により、人件費が上昇し、中国はその優位性を失うこととなった。現在、多くの企業が工場を人件費のより安い国に移すようになっている。」南京大学商学院の宋頌興教授はインタビューでこう答えた。宋教授によると、今後この流れはさらに顕著になっていくという。
業界関係者によると、「中国製」に対する保護貿易主義の台頭と人民元の切り上げにより、過去10年に渡り世界一の地位を築き上げた「中国製」に変化が訪れた。しかし、これは中国が世界の工場としての優位性を失ったという意味ではない。「ベトナム製」は「中国製」に取って代わる存在ではなく、あくまで「中国製」の補足的な存在であるという。