米国の格下げは米国の経済・金融市場にとってはもとより、世界の経済・金融市場にも深刻なマイナス影響を与えた。
第一に、今回の格下げは投資家の信頼感に直接的なダメージを与えた。すでにかなり脆弱だった金融市場がさらなるダメージを受け、より深刻な要因が加わったことは間違いない。過去1週間、世界の株式市場には恐慌にも似た投げ売りが行われた。今回の格下げにより、未来の資金の米国債離れの傾向が一層顕著になり、市場の混乱が一層激しくなることが予想される。
第二に、今回の格下げは世界の信用リスク・プレミアムの水準を一層上昇させる可能性がある。米国は損害を被るだけでなく、各種の資金貸出のためにより高いコストを支払わなければならなくなり、欧州の債務危機に対するグローバル市場の疑念が一層高まり、信用状況のよくないユーロ圏の経済体が一層ダメージを受けやすくなる。さまざまな溢出効果は、今後も引き続き世界全体に拡大し、米欧の信用に対する市場の信頼感の危機を高めることが予想される。
第三に、今回の格下げはグローバル経済の復興にマイナス影響をもたらすことになる。米国の経済成長に対する人々の見方はより悲観的なものとなり、米国の債務発行コストは増加し、大規模な債券発行や米ドルの過剰発行による経済発展というやり方が難しくなる。借金がますます難しくなり、経済がますます停滞し、信用がますます低下するという悪循環に陥る可能性がある。米国人の借金コストが上昇し、購買力が低下して、「最終消費者」という米国の役割が徐々に終わりになるとみられる。米国のニーズの減少は、米国からの注文頼みだった国の経済成長が鈍化することを意味する。