米『外交』9/10月号、原題「不可避の超大国――中国が主導的国家となるのが必然である理由」
1956年スエズ危機のさなか、米国はイギリスに対し同国が必要とする融資の打ち切りをちらつかせて圧力をかけ、スエズ運河からの軍撤退を要求した。ときのイギリス蔵相ハロルド・マクミランが後にこの件を振り返り、「衰退した大国の末期の一息だった」「200年後には米国がこの皮膚を切られるような痛みを体験することになるのかもしれない、今の我々と同じように」との言葉を残している。
中国が米国を追い越す日が刻々と近づいているのかという設問は米国ではまだ話題にされていない。米国経済の支配的地位が脅かされることなどあり得ず、中国が経済超大国になりつつあるとしても、米国をトップの座から引きずり下ろすことにはならないという見方が米国では主流である。しかしそのような観測は、20年後に中国が経済の主導権を握りえるという現実的な可能性を過小評価しているし、米国の自己中心的な考え方が投影されている。世界の主導権の所在を決めるのは米国であり、中国の役目ではないのだという考え方である。
一般的に言うならば、経済の主導的地位にあるということは、経済的手段を通して自国に有益なことを他国にさせたり、逆に自国に対して不利益なことを他国にさせないようにできるというを意味する。2030年までに米国の衰退によって生まれるのは多極化した世界ではなく、中国主導による単極化に近い世界であろう。GDPに関しても貿易に関しても、中国は2030年までに支配的地位につくに違いない。