欧州債務危機の再燃や米国の経済危機、回復の兆しのない日本市況などを背景に、9月下旬、世界の投資家の間でパニック的な株の売りが膨らみ、45の国や地域の株式市場でベア?ポジションが取られた。株式市場全体で暗雲が垂れこめているだけでなく、金、銀、銅の価格も揃って下落に転じ、円高も日ごとに進み、外国為替市場にも不穏な空気が漂う。このような中、在日華人はどんな金融商品に投資するにしても、恐る恐る手を出すという状況になっている。損失を出すことが避けられない現状において、大きな利益を求めるのではなく、いかに金融資産の損失を少なく抑えるかが華人達の財テク目標になっているようだ。日本で華人向けに発行されている新聞「中文導報」が報じた。
▽10年間でドルを買い増した華人 資産価値が半分に
世界株式市場は過去6カ月の間に、18%下落し、株式の時価総額10兆ドル(約7600兆円)以上が水の泡となった。一方、日本も震災に伴う津波や福島第1原発事故などの重なる打撃を受けた後、金融市場も世界の金融危機のあおりを受け、株価の下落、急激な円高という二重苦に陥っている。この半年間、日本の株式市場は全体で11%下落したのに対し、円ドルレートが1ドル83円から76円台にまで高騰する歴史的な水準になっている。このように悪化の一途をたどる市況に、在日華人の投資家の大部分が万策尽き、無力感に浸っている。
日本のある会社でネット開発・管理に携わっている秦さんも投資家の一人である。秦さんは取材に対して、「手元に投資に回すことのできるお金はもう残っていないので、大暴落している市況を前に、ただ傍観することしかできない。過去10年間の投資を振り返って計算してみると、50%近くの赤字。もちろん投資はリスクと隣り合わせということは分かっているが、自分の経験ではリスクの方が圧倒的に多い。自分の周りの華人の投資家もそう感じている。振り返って見ると、数年前に自分が積極的に投資をしていたころ、控えめで、投資をするのをおっくうに感じ、円をそのまま持っていた友人たちの資産価値が、円高が急激に進んだことで、今逆に上がっている」とし、「私は株式市場に投資したのではなく、円をドルに替えたので、手元に円資産はほとんどない。こんな損失を出すなんて予想だにしなかった」と肩を落とす。
秦さんはまだ1ドル120円だったころにドルを買い、その後ドル下落が開始、下がり始めの110円ほどの時に、回復を見込んで、損失を取り戻すためにドルを買い増したものの、ドル円レートは下落の一途をたどり、リベンジのチャンスはゼロに等しかった。現在、円ドルレートは1ドル76円という歴史的な円高水準になっており、それも、日本政府が幾度となく円売り介入をしてやっと現状維持しているという状況である。現在、世界で手元にドルを持っている人はいわば紙切れを握っているようなもの。秦さんは「外国為替に投資する面で、私は慎重なほうで、外国為替証拠金取引(FX)には手を出していない。でも、手元にあるドルは40%のレート損失を出してしまった。本当にがっかり」と嘆く。