林国本
北京で暮らしている人間にとって、北京の変化はまさに日進月歩の感がある。古い市街区の再開発、かつての郊外区・県への延伸で北京は大きく様変わりしつつある。最近、郊外に近い大学へ所用で駆けつけたが、途中の変貌ぶりには「自分は浦島太郎になったのでは」と感じたほどである。以前、北京の南部は比較的開発が遅れている地域と見られていたが、今では高層ビルが建ち並び、大きなショッピングモールがいくつもできて、北京市民は時空感覚の変化をひしひしと感じている。
町をぶらぶらしても、ルイ・ビトン、エルメスなどのブランド品を売っているお店、スターバックスコーヒー・ショップがあちこちで目につき、博物館、図書館、美術館などには大勢の人が詰めかけ、映画館もシネマコンプレックスタイプのものがほとんどで、国産の映画はもちろん、ハリウット映画なども毎日上映しており、時々、新聞などで取り上げられている作品を時代に遅れないように見に行っているが、観客のほとんどはヤングで、ポップコーンを食べながらフィアンセと楽しそうに観賞しているのがほとんどで、私のようなロートルは場違いのように感じるが、それでもジャーナリストのはしくれとして時代について行くために、食べなくてもいいポップコーンを買って仲間入りして観賞している昨今である。
こういう変化は北京だけでなく、中国の他の都市でも目にすることができる。つまり、国全体が経済の発展で、だんだんと変貌をとげつつあるのだ。
最近、ニュースで北京の山間部の過疎地帯に住んでいた人たちを村ごと平原地帯に移住させたことが伝えられていたが、これも大きな変化の始まりであろう。
しかし、いいことずくめではない。交通渋滞は一部区間ではまだ起こっているし、大雨が降ったりすると、下水道が完備していないせいか、ときどき浸水騒ぎが起こっている。今年は大雪が降るかどうか知らないが、数年前に一度ひどい大雪で夜中に自宅にたどりついた人もいたくらいだったが、こういうことは世界じゅうの大都市でも起こっているので、都市の開発と都市の管理の改善は同時進行的にすすめる必要があろう。
今回、タイの首都バンコクの冠水害の様相をテレビで見ていて、やはり高度成長とアメニティーの両方に気を配る必要性を感じた。
私見であるが、北京もこれ以上クルマが増えると、渋滞がさらにひどくなるに違いないので、この辺で一部の人たちを除いて、公共交通システムの利用に切り換える必要があると思う。近代化はすばらしいことだが、こんなにクルマが増えてしまってはアメニティーが損なわれることになる。
アメニティーを感じ取れる町づくりこそ、世界的大都市のコンセプトにふさわしいことではないだろうか。よく言われている和諧社会、ソフトパワーを重視した社会を構築してこそ、世界で一番すばらしい都市と言われるようになれるのではないだろうか。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年11月12日