「過去数十年の間に成功した日本企業の背景で、真に力を発揮していたのは卓越した才能を持つ人々だった。彼らは、独創的な製品と技術によって日本企業を成功の道へと導いたのだ」とピーター・ケネバン氏は指摘する。「しかし、外部市場に大きく変化が起きているにもかかわらず、企業のトップはなす術がない状態だ。彼らは変化を嫌う。変革を行なう事は彼らの過去の栄光を否定することになると考えているからだ。このような様々な要因によって、日本企業は時代の変化に対応して発展する事ができず、トップランナーから追走するものになり、やがては脱落してしまうのだ」。
iPodは本来ならソニーに帰属するはずだった。アップルがiTunesのオンラインサービスを開始した当時、ソニーも同様のサービス開発を考えていた。しかし、実際には行動に移されなかった。CDが消えてしまうことを会社は望まず、ソニーのWalkmanの地位が脅かされると考えた人は一人もいなかったからだ。このような盲信がもたらす悲劇について、Kodakのデジタルカメラ事業からの撤退を思い浮かべる人も多いだろう。映像大手のKodakは「フィルムを売れば、Kodakは十分に生き残る事ができる」と思っていた。デジタルカメラの分野に積極的に参戦しなかった結果、悲惨な撤退を余儀なくされた。