--韓国には対日貿易赤字が存在し、国内の反発が大きいことから、まず中韓FTA交渉の実施に踏み切ったのでしょうか。
瀬口氏:韓国は対日貿易赤字が大きく、日本との交渉に意欲的でない。日韓FTAが成立すれば韓国の赤字が拡大することは、日本もわかっている。だからと言って日中関係だけを重視するわけにもいかない。やはり三国に影響が出るためだ。
もちろん韓国も日中韓FTAを完全に拒否しているわけではない。日本は韓国の軟化を待たねばならない。これまでの米国とのFTA交渉でも、韓国国内で反対の声が大きかった。韓国が日韓FTAを先に開始すれば、国内の反発はより深刻化するだろう。
まず中韓FTA交渉から入り、日中韓FTA交渉を開始すれば、問題は少なくなるはずだ。
張氏:日韓もこれまでFTA交渉を進めていたが、両国にそれぞれの懸念があり、最終的にまとまらなかった。まず敏感な産業についてだが、日本は製造業で優位を占めている。一方で韓国国内の製造業は日本に及ばないため、関税が引き下げられれば、韓国国内の劣勢が深刻化する。また韓国には現在、北東アジアひいては東アジア全体の経済中枢となる野心があり、先に中国とFTA交渉を開始することとなった。
韓国は日本の製造業を懸念し、日本は韓国の農業を懸念している。両国を比較すると、韓国の懸念の方が大きい。