同報告書によると、今後の世界経済が直面する下振れリスクは依然として大きい。最も切迫したリスクは、これまでと同じく政策的行動の遅れあるいは不十分さがユーロ圏の危機を一層激化させるというものだ。その他の発達した経済体の財政政策に関連する下振れリスクとして、次の2点が挙げられる。米国国内の最近の政治的な行き詰まりをみると、財政が過度の引き締めに走ることが短期的な主要リスクになると考えられる。また米国と日本がしっかりした中期的財政調整計画をなかなか制定できないでいることがリスクになると考えられる。
同報告書は新興市場・発展途上の経済体の経済成長に楽観的な見方をしており、短期的にこれらの経済体に出現する下振れリスクは主に外部的要因に関係があるものだと指摘する。2011年中期以降の新興市場の経済成長の鈍化は、部分的には経済における過熱現象に対処するために取った引き締め政策によるものであり、その後をみると政策は緩和に向かっている。IMFによれば、新興市場経済体の政策の緩和は今年下半期になって実を結ぶという。またIMFの指摘によると、過去10年間、金融の深化と貸付の急速な伸びにより、新興市場経済体の経済成長が歴史的な勢いをみせたため、今後の中期的な成長ペースは予測を下回り、世界の経済成長に対する貢献度もやや低下する可能性があるという。
中国についてみると、同報告書は今年の経済成長率を8.0%、来年を8.5%と予測し、4月にうち出した予測に比べて今年は0.2%、来年は0.3%、それぞれ下方修正した。中国経済がこれから中期的に硬着陸するリスクは非常に確率が低いという。
「人民網日本語版」2012年7月17日