第三に、円高の圧力が減じていないことだ。企業の海外移転の流れが強まり、国内産業の空洞化が進んでいる。企業の合併買収(M&A)コンサルティング企業RECOF10が10月末に発表した調査結果によると、今年1-9月に日本企業が海外で行ったM&Aは364件に上り、前年同期比7.4%増加し、22年ぶりに第1-3四半期のM&A件数の記録を更新した。同社の予測によると、今年通年のM&A件数は過去最高だった1990年の463件を上回る可能性がある。金額をみると、第1-3四半期の買収額は4兆9900億円で、前年同期比22.9%増加し、歴代3位だった。買収額が大きくなった主な原因は、日本の国内市場が縮小して、より多くの企業が海外業務の展開に着手したことにある。長期的な円高も海外投資を後押しした。こうした影響により、今年の春以来、日本国内での生産が大幅に落ち込み、雇用にも影響が出ている。
第四に、政府がうち出した「日本再生戦略」が近くの火も消せないことだ。日本政府は今年、経済を刺激する緊急対策を相次いでうち出し、経済の振興をはかろうとしたが、制度面での制約と政争の影響を受けて、実際にはなかなか実行に移せていない。日銀は9月以来、大規模な量的緩和政策をうち出したが、目立った効果は上がっていない。このため日銀は現時点ではさらなる金融緩和に慎重な態度を取っている。