危機の性質を考えると、「内部発生的な危機」と「外部発生的な危機」に分けることができる。このたびの経済危機の本質が、ウォール街の投機文化と金融投機市場の中から発生していることは間違いない。ウォール街の発展史は米国の勃興発展の縮図といえる。南北戦争を経て、米国では「路線の対立」が解消し、第2次産業革命では、ウォール街が金融センターの位置を確立した。2度の世界大戦により、米国は最終的に世界の覇者となり米ドルの覇権的な地位が確定した。
このような道のりの反映するものが米国の勃興発展であるとすれば、ウォール街の背後にある世界経済のゲーム参加のルールは、米国の強い権限を維持することだといえる。「大博奕」の作者はこのゲーム参加のルールを、「経済と貿易をめぐる強い権限」、「資本をめぐる強い権限」、「科学技術をめぐる強い権限」、「世論をめぐる強い権限」、「政治と軍事をめぐる強い権限」だとしている。西側の論理の出発点には2つの種類がある。資本の論理と政治の論理だ。この2つの論理の共通点は、上記の5つの強い権限を利用して、世界の発展で生じた利益の圧倒的な部分を保有し、世界を統治することによって取り分を強化するというところにある。たとえば05年以来、米国は人民元の切り上げを迫ってきた。中国には2兆ドルを超える米ドル資産があるため、人民元の対米ドルレートが30%以上上昇して(インフレ率を考慮すれば40%以上の上昇となる)、巨額の損失がもたらされた。また為替の損失により、中国の中小企業は輸出で損失を被った。中でも08年には6万社から7万社の中小企業が倒産した。米国のオバマ大統領は10年にオーストラリアメディアの取材に応えた際、テレビ映像を通じ、10数億の中国人が米国やオーストラリアと同じような生活を送るようになれば、それは人類にとって悲劇であり災難だと発言し、世界中の人がこの発言を聞くことになった。