中国が既存の国際ルールの下で大国として発展するにはどうしたらよいか。ここ数年来の人民元の上昇の経緯が多くの警告を与えてくれる。中国はこれまでずっと国際資本にとって最も重要な危機をなすりつけ先だった。この点がわれわれに教えてくれるのは、世界の中で中国の利益はすぐにも危機に陥る可能性があり、高度な警戒が必要だということだ。人民元の国際化プロセスや国際通貨基金(IMF)における出資枠拡大などは、中国がゲームのルール制定の一部分に介入するようになったこととみなされる。また最近の合和公路基建有限公司を筆頭とする海外上場企業の人民元建て株式の発行は、同プロセスを物語る最新の事例だ。よって米国の発展史を整理し分析すれば、米国の中国に対するプラスの価値をしっかりと認識する上で極めて現実的な意義がある。「大博奕」は米国を解剖分析し、中国に成長路線の参考資料を提供するもので、世界の舞台に上った後で自国の利益をどのように主導していくかを教える教科書となっている。マイナスの教訓もある。それはバーチャル経済と実体経済とのバランスを保つにはどうしたらよいか、実体経済の空洞化が招くマイナスの結果を避けるにはどうしたらよいかという点だ。このようなマイナスの結果は、米国や欧州が相次いでうち出した大規模な通貨緩和政策が世界の流動性の氾濫を招いたことに原因があると考えられる。またここから各国の政策の方向性をうかがうことができる。米国は氾濫する流動性によって均衡を失った国のバランスシートを修復しようと考えている。ロシアは米ドル建ての石油価格決定システムを打破し、エネルギーをめぐるプレミアムを獲得しようとしている。EUは危機を克服するには引き締め政策を採るか拡大政策を採るかをめぐり内部で論争が続いているため、昨年第3四半期(7-9月)にはスペインで失業率が過去最高の25.04%になり、失業者が578万人に達した。中国は巨額の財政投資を行い、国内では投資を牽引し、消費を喚起し、国外ではレート上昇がもたらす輸出の圧力と資産の消失のリスクをヘッジした。だが作者によると、世界経済の硬着陸が中国にとって最大のリスクだという。不動産価格が高止まりしており、不動産バブルが崩壊して経済に大きな打撃を与えることをいかに回避するかが、今われわれの直面する最大の問題だという。