第三に、3つの緩和政策では輸出効果によって経済成長を効果的に喚起することが難しい。日本は外向型の経済体であり、経済成長は長らく国際貿易に依存してきた。伝達ルートを分析すると、まず3つの緩和政策が大幅な円安を長期にわたって推し進めることは難しいといえる。短期的には外国為替市場で円売りの勢いが強まるが、米国、ユーロ圏、新興市場国が相次いで通貨緩和政策をうち出する中で、日本の緩和政策が優位を保てるかどうかはわからない。また国際市場で金利差が縮小することを背景として、国際的な裁定取引(アービトラージ)の反対売買は長期的な円安にとってマイナスとなる。次に、円安の輸出活性化の効果は市場の期待を下回るとみられる。その原因は、85年のプラザ合意以来の長期的な円高が日本の輸出のエンジンを損なってきたことにある。13年のグローバル経済は低速運転となり、外部需要の伸びは力不足に陥るとみられる。日本の輸出商品の競争力そのものも下降線をたどっている。12年11月末現在、日本の輸出額は6カ月連続で前年同期比マイナスとなり、貿易収支は14カ月連続で赤字になった。