第五に、3つの緩和政策では短期的に力を発揮して日本の長期にわたる問題を解決することが難しい。本質的には、3つの緩和政策はケインズ主義に基づく需要拡大の政策であるが、実質的には日本経済の長期的な低迷の大きな原因は供給のレベルと構造にあるといえる。まず、日本の製造業は問題点が山積して弱体化している。次に、日本の生産要素全体の生産率の伸びが鈍化しており、米アップル社や韓国サムスン社の飛躍により、これまで優位に立っていた日本の家電製品・電子製品が徐々に競争力を失い、シャープ、パナソニック、ソニーといった家電メーカーは生き延びるためにますます厳しい圧力にさらされるようになっている。このほか高齢化の進行がますますハンディキャップとなっていく。高齢化は一方では消費の急速な伸びを抑え、また一方では社会保障をめぐる圧力を増大させる。日本の年金基金は日本国債の最大の保有者であり、資金面での圧力に対処するため相次いで国債を投げ売りしており、国債の金利の低下をくい止めてもいる。