このことを受け、香港金融管理局(HKMA)は、2012年8月1日から、香港の銀行が非香港居住者に対し、人民元建て預金口座を開設し、人民元建て業務を提供するという新しい策を打ち出した。また、香港居住者のオンショアレート(CNY)での両替は1日2万元に制限されているが、非居住者のオフショアレート(CNH)での両替はこの制限を受けない。
人民元建て預金の急増傾向に、2011年10月から微かな変化を表れ始めた。10月末、香港での人民元建て預金の規模は6185億元、9月末の6222億元に比べ0.6%減少した。この縮小傾向は止まることなく、2012年4月には、人民元建て預金は730億元減の5543億元まで落ち込み、11.6%近い減少となった。
この間、香港における人民元建て金融商品の開発は本格化し、株式・債券や金などの人民元建て投資商品が市場で次々と打ち出されたが、人民元建て預金の急速な減少に影響を及ぼすまでには至らなかった。これには深い訳があると市場関係者は指摘する。中国銀行香港発展企画部経済・政策研究主任の謝国梁氏は、「当時、人民元のオフショアレートはオンショアレートよりも高く、加えて市場は人民元の単方向の切り上げ予想に慎重な態度を示していた。そのため、手持ちの人民元で貿易決済をする香港の貿易企業が増え、人民元建て預金の減少に繋がった」と説明する。