各国が相次いで新たな量的緩和策を発表する中、あるメディアが「中国の通貨過剰発行も深刻だ。昨年、中国の通貨増加量は世界の約半分を占め、世界最大の紙幣印刷機になった」と報じた。これについて専門家は、「このような言い方はあまりにも常識外れで、一方的すぎる」との見方を示している。中国の通貨発行量が本当に深刻なのかどうか、1つのデータに基づいて当て推量することはできない。通貨が過剰発行状態かどうかを判断する指標の1つとして物価の安定がある。金融政策の良し悪しを判断する上で重要なのは、経済の成長率・規模と歩調が合っているかどうかだ。
▽中国の通貨過剰発行は誇張
中国の通貨過剰発行問題はここ数日、各方面で話題になっている。中国人民銀行(中央銀行)の統計データによると、2012年末現在、中国のM2残高は97兆4200億元に達し、世界一となった。この額はすでに、世界のマネーサプライ総量の4分の1に近づいており、米国の1.5倍だ。さらに、M2の対GDP比は188%の過去最高に達した。ちなみに同期の米国の同比率は63%で、中国のわずか約3分の1だった。一部メディアはこの差を根拠として中国を「世界最大の紙幣印刷機」と比喩し、多くの人が中国の通貨過剰発行が深刻であると考えるようになった。
しかし、専門家はこれについて「表面的に見て、中米のデータを比較すればこの結論も一理あるように感じるが、理論的に分析、もしくはもっと広範囲で比較すれば、この判断が大雑把であることが分かる。特にM2残高と対GDP比だけで中国が通貨過剰発行状態だと断定するのはあまりにも単純で一方的だ。各国のマネーサプライの統計範囲の違い、融資構造の違い、経済発展段階の特徴などの要素を全く考慮していない」と指摘する。
中国人民大学財政金融学院の趙錫軍副院長は「中国の通貨発行量は確かに多いが、中国経済の成長率を見ずに単純に過剰発行だと決め付けてはならない。合理的な通貨発行は、国の経済成長率・規模に応じたものであるべき。例えば米国は経済成長が鈍化しているため、発行量を再度増やせば過度な発行になってしまう」とする。