しかしインフレ期待を高める無制限の量的緩和は結局は劇薬であり、しかも日本にとって過去20年間で最も大胆な経済改革計画だ。これによって将来直面しうるリスクと変数は大きくないとは言えない。国内的には、量的緩和の最大の後遺症は債務負担の急激な膨張だ。日本政府の債務はすでに対GDP比で世界最悪の230%に達している。
自らの債務状況の悪化に不安で気が気でない日本が大胆な量的緩和を行うことで、思いがけない外的リスクが招き寄せられる可能性もある。円安が進む中、関係国が輸出および経済への打撃を軽減するために為替介入によって自国通貨高を阻止することで、通貨安を競い合う「通貨戦争」が引き起されるというのが、基本的に予想されることだ。事実、日本が円安を目標とする無制限の量的緩和政策を打ち出して以降、ユーログループ議長はユーロ相場はひどく高いレベルにあると発言して、欧州の政策決定者にユーロ切り下げの考えがあることを示した。過去半年間に対円でユーロ高は30%も進行した。これはユーロ圏の輸出にとって厳しい試練であり、ユーロ圏全体の景気回復にとって足手まといとなるものだ。日本政府が為替相場問題で事を急ぎすぎたり、行き過ぎたりすれば、ユーロ圏諸国がいつでも「歯には歯を」で応じることが想像できる。