上述したリスク以外にも、地方政府の債務規模の拡大は減税政策による内需刺激の効果を相殺し、経済発展のモデルチェンジ・グレードアップを妨げると筆者は見ている。アメリカを代表する経済学者であるロバート・バロー氏はかつて、「政府の借金による資金調達は、税収による資金調達と同じである。消費者は当期の収入で消費を決めるのではなく、一生涯の収入で消費を決めるからだ」と指摘していた。つまり、政府が借金によって調達した資金で減税政策を行っても、消費者の一生の資産は最終的には変わらない。現在の収入は確かに増えるものの、債券が満期を迎えた時、政府は返済のために税金を徴収すると消費者は見ている。そのため、債券発行によって調達した資金で減税を実施することは、徴税の時期をずらしただけで、国民が保有している債券も将来的には税金で取られることになる。
中国の地方政府が尚も債務規模拡大の衝動に駆られる一方、財政収支の矛盾は日増しに深刻化している。この状況を受け、債務規模の拡大を更に厳しく規制し、地方政府の融資プラットフォームの管理をより一層強化する必要がある。2012年末、中国財政部、国家発展改革委員会、中国人民銀行(中央銀行)、銀行業監督管理委員会の4部門は共同で『地方政府の違法・法規違反の融資の阻止に関する通知』を下達し、地方融資プラットフォームを規範化し、地方の国有土地を担保にした「城投債(都市インフラ建設向けの準地方政府債)」の発行を禁止したことで、「城投債」の拡大をある程度抑制している。これらのことを基盤とし、いち早く統一した基準を設け、地方政府の融資プラットフォームの事業範囲を厳格にインフラ整備などの公益事業に限定するべきであると筆者は考えている。地方政府の債務規模の拡大を抑制し、減税政策による内需刺激の効果を政府の債務が相殺してしまうことを防止して初めて穏健な経済発展モデルの転換が実現できる。
「中国証券報」より 2013年3月29日