日本が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する目的は、米国にぴったり寄り添い、米国の力を借りて国際経済の世界で戦い、対等なルール制定権を獲得し、対等なリバランスを達成することにある。2001年以降、日本は太平洋西岸で、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中核とし、インドにまで広がる事実上の「アジア共同体中核圏」を構築し、「アジアの秩序の日本化」のひな形が姿を現した。ここには米国は含まれておらず、中国はASEANと自由貿易協定(FTA)を結んだだけだった。こうして日本は地域の通商の秩序を主導する戦略的優位を獲得した。だが米国のブッシュ大統領がかつて任期中に試行したアジア太平洋経済協力(APEC)の枠組内でのFTAが、東アジア共同体を埋没させた。オバマ大統領はTPPをよりどころとし、TPPを活用して、東アジア共同体の問題を根本的に解決し、脱構築を進め、北米自由貿易協定(NAFTA)を包括的に組み込み、範囲を拡大し、外部から牽制しようとしている。オバマ大統領はルールを変更・刷新して、制度の優位性を確保し、日本に追随を迫り、「制度的な優等生」である日本の地位を瓦解させようとしているのだ。(文:劉軍紅・中国現代国際関係研究院日本研究所研究員)
日本は米国にぴったりと寄り添い、流れに乗って敵を倒す太極拳のような戦術を採ると決め、TPP交渉への参加を決定した。これにはリスクもたくさんある。一方では、安倍晋三首相は訪米時にTPP交渉への参加を承認し、米国との事前交渉を終えた。参議院議員選挙で勝利を収めた今、安倍首相にはこれ以上交渉参加を引き延ばす理由はない。また一方では、TPPがカバーする21分野の新ルールのうち、15分野はすでに交渉がまとまっており、日本は6分野の交渉にしか参加できない。これには政府調達や知的財産権など世界的な難題が含まれる。また日本は国内の制度的準備を終えていない上、日本の最大の関心事である農産品や工業製品などの関税についての話し合いはすでに終わっており、農業の利益が保証されるかどうかは確かでない。
日本の自民党は参院選の公約の中で、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖といった政治的に敏感な分野の利益が保証されなければ、交渉から撤退すると約束した。選挙を終えて、農業の保護を主張するTPP参加慎重派が日に日に勢力を拡大している。安倍首相はTPP交渉への参加を通じて、米国などと対等な地域ルールの制定権を獲得することを願っているが、事態はそれほど楽観的ではないだろう。(編集KS)
「人民網日本語版」2013年7月25日