李克強総理が寄稿した「中国は世界に持続的発展の情報を伝える」が、9月9日付の英フィナンシャル・タイムズ紙に掲載された。全文の内容は下記の通り。
国際金融危機の発生から5年後の今日、世界経済の成長が緩慢な回復の過程をたどる中、新たな課題が各国に突きつけられている。中国の大連で今週開幕する夏季ダボスフォーラムが世界の視線を引きつけており、人々は同フォーラムから中国政府のシグナルを獲得し、モデルチェンジの重要な段階に入っている中国経済の力を実感しようとしている。
観測筋からは、「中国経済成長の減速の流れが、最終的に大幅な低迷、さらにはハードランディングを招くのではないか」、「中国の改革開放の道は、さまざまな複雑な社会問題により脱線するのではないか」という質問の声があがっている。私の答えは、「中国は経済の長期的かつ健全な発展を維持し、引き続き改革開放の道を歩む」だ。
中国の新指導部は今年3月の発足以来、経済を持続的に発展させ、国民生活を絶えず改善し、社会の公正を促進するという施政目標を明確にしている。中国はエネルギー多消費・投資依存の古いモデルを踏襲できず、「安定成長、構造調整、改革促進」を統一的に計画する必要がある。
改革の深化は依然として持久的な原動力だ。中国はこれからも行政のスリム化と権力の移譲により構造改革を推進し、混合所有制経済を発展させる。市場にできることは市場に委ね、社会にできることは社会に分担させ、政府が管理すべきことは管理を徹底する。
中国は行政管理、税制・財務、金融、価格などの改革を引き続き推進する。今年の夏季ダボスフォーラムのテーマは「イノベーション」だ。これは技術のイノベーションのみならず、より重要なことは制度面のイノベーションであり、改革の貫徹こそがイノベーションであると理解している。
開放の加速はブースターである。中国はWTOドーハ・ラウンド交渉の支持を継続し、関連国との二国間自由貿易協定の締結を推進し、中国―ASEAN自由貿易区のアップグレード版を構築し、外国企業による投資の公平性と法的環境の改善を続けていく。中国は開放拡大の新たな方法を積極的に模索する。上海の自由貿易区実験区の設立は、一つの重要な試みだ。
内需拡大が主な方針となる。中国の大きな優勢は、豊かな生活を求めそのために勤務に励もうとする13億人の国民であり、巨大な国内市場を有している。中国は、情報産業の発展の促進(ブロードバンドの拡大と4Gライセンスの発給など)を含む、国内消費需要の拡大に努める。
消費に注目すると同時に、中国は合理的な投資を維持する。重点は省エネ・環境保護産業の発展、中西部鉄道プロジェクト、市政設備の建設などの加速だ。
都市化は長期的な内需拡大に大きな潜在力を提供する。今後10数年に渡り、中国の1億人以上の人口が都市部に溶け込む。これは極めて複雑な経済・社会変化の過程であり、新たな共同発展政策が必要だ。さまざまな困難があるが、これは中国の都市部と農村部の格差を縮小するため、避けては通れない道だ。
サービス業は新たな支柱だ。最大の雇用受入先であるサービス業は、経済のグレードアップの圧力を緩和する。政府は大々的に、公共サービスの改善に取り組む。中国は今年、多くの零細企業(そのうちの多くはサービス業)に対する、増値税と営業税の課税を一時的に免除した。
中国政府は経済運営の合理的な範囲の「上限」と「下限」を明確にし、過度な変動を防止している。「下限」を明確にしたのは、安定成長と雇用維持のためである。GDPはかつての二桁成長から、2011年の9.3%、2012年の7.7%に下がっている。今年はさらに約7.5%に安定的に移り変わるが、これは経済法則のすう勢であり、主導的な調整・抑制による結果でもある。「上限」を明確にしたのはインフレ防止のためで、今年のCPI上昇率は約3.5%となる。経済運行をこの合理的な範囲内に維持し、金融リスクを着実に防止し、市場と社会に安定的な景況感をもたらす。
今年より、中国経済の運行は「穏中有進」(安定の中で成長する)となり、上半期のGDP成長率(前年同期比)は7.6%となった。5%の失業率(調査ベース)と2.4%の物価上昇率は、いずれも合理的でコントロール可能な範囲に収まっている。
世界経済には依然として、不確定要素が存在している。一部の先進国が量的緩和策を終了するという予想は、大量の資金を先進国市場に回流させ、アジア各国の株式市場・為替市場の大幅な変動を触発しており、一部の観測筋はアジア通貨危機が再演されることを懸念しているほどだ。私は、アジア各国はかつての経験の中から教訓を汲み取り、リスク防止の能力を大幅に引き上げたと認識している。為替相場形成メカニズムがよりフレキシブルになり、外貨準備高が普遍的に拡大されており、通貨両替に関するチェンマイ・イニシアティブやさまざまな二国間金融計画は、複雑な局面への対応により良い条件を提供した。中国はこれについて、自信を持っている。
中国は依然として発展途上国であり、自国の多くの任務と課題を抱えている。中国の国力の強化に伴い、中国は国際事務においてより多くの、自国の条件に合致する責任と義務を果たし、各国と共同で世界の平和・発展事業を促進することになる。私は世界経済が低迷から脱却し、再び繁栄することに期待している。中国経済のグレードアップ版も、世界経済に新たな原動力を提供するだろう。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年9月9日