米国国内の政治環境も交渉の妥結にとってマイナスだ。オバマ大統領が力強く進めるTPP交渉は米国国内で強い反対の声にあっており、反対の中心は大統領の率いる民主党の同志たちだ。米国企業は交渉が妥結することで輸出を振興させたい考えだが、米国の労働組合やその他の反対派は、TPPという地域貿易協定が雇用の海外流出を激化させ、消費者に対する保護を弱めるのではないかと懸念する。
▽安倍首相は交渉によって国内の構造改革推進を目指す
TPPは世界貿易機関(WTO)のドーハラウンドが停滞することを背景とた、米国の主導する、アジア・太平洋エリアの貿易自由化を推進する協定であり、「アジア・太平洋のリバランス」戦略が重要な内容だ。現在、ベトナムやブルネイをはじめて12カ国が交渉に参加。12カ国の経済規模は世界全体の40%を占め、貿易額では30%を占める。
日本は昨年7月に交渉に加わり、牛肉、乳製品、豚肉、砂糖、米を農業の重要5品目として関税の維持を前提としてうち出し、また米国に輸入自動車と輸入軽トラックに対する関税を撤廃するよう求めた。だが米国は農産品の関税を全面的に撤廃するとの姿勢を崩さない。米国の元の計画では昨年末までに交渉は基本的に妥結するはずだったが、参加国の間には知的財産権や国有企業の改革などさまざまな問題で溝があり、これまで19回にわたる交渉が行われたものの、いまだに実質的な進展は得られていない。