2013年から2018年まで、多くの国の名目賃金の上昇率は中国を下回るものと見られる。だが経済規模が重要なビジネス環境において、中国に匹敵する労働力を持つのはインドだけだ。中国の競争相手としてしばしば持ち上げられるメキシコやブラジル、エジプトなどは、生産性でゆっくりとした伸びしか期待できない。
賃金はもちろん、工場移設を考慮する要素の一つにすぎない。生産はさらに、コストやインフラ、資本投入、市場の経営リスクなどにも影響される。生産率の成長速度と経営リスクをチャートにすると、多くの新興市場の経営リスクが中国を上回っており、アルゼンチンやエジプト、ナイジェリアなどではそれが顕著になっていることがわかる。中国よりもコストは低いがリスクが高い国には、インドやインドネシア、フィリピンが挙げられる。コストもリスクも低い国は、メキシコとペルー、ポーランド、台湾地区しかない。エコノミストはこれまでも、低コストの製造業者がここ数年で中国を離れてほかの新興市場に向かうことはないとの見方を示してきたが、今回の分析はこの見方を裏付けるものとなった。