日本の経営の父と言われる稲盛和夫氏も、現在そのような経営者がいないことを嘆く。かつてソニーでゲーム分野をゼロから立ち上げた久多良木健氏は、異端と見られたこともあったが、優れたリーダーとしての資質を備えていた。大切なのは技術革新を読み、新しい生産ラインを理解できる経営者であることだ。しかし現在の日本企業で出世する人は“文科系”の“世渡りのうまい人間”になってしまった。
“理科系”軽視の日本企業
日本企業の凋落の背景には、リーダーの資質不足に加え、日本人や日本全体が技術革新を軽視していることが挙げられる。ジョブス氏の有名な言葉がある。「顧客が何を欲しているのか考えているだけではだめだ。そして顧客に何を提供できるかを考えることだ。それもすぐである。顧客は君が作り始めるのを待っていてはくれない」というものだ。しかし日本企業の多くは、依然として「お客様の答えを待っている」状況だ。その点で、かつて経営の神様といわれた松下幸之助も、“待つこと”で激しい企業戦争を勝ちぬいた。かつて松下電器は“まねした電器”と同業他社に揶揄されたことがある。松下の経営の真髄は、改良であり、革新や創造ではなかった。真似はしょせん真似でしかない。