上海南部のある老人ホームでは、十数人の入居者がボランティアに助けられ、音楽に合わせてリズムを取ったり、体を動かしたりしていた。米国の老人ホームではありふれた光景だが、中国ではこのような老人ホームはまだあまりない。米紙「シアトル・タイムズ」が10日、「シアトル企業が老人ホームを中国に輸出」と題した記事で報じた。
上海徐匯区に位置するこの老人ホームは、米シアトルに本部のある「コロンビア・パシフィック・マネジメント」傘下の「カスケード・ヘルスケア」が中国で運営する3施設の一つ。中国で同産業に進出している米企業にはほかに、ニューヨークの「フォートレス・インベストメント・グループ」やシアトルの「メリル・ガーデンズ」がある。
中国では米国と同様、高齢者人口が増え続けている。だが米国と比べると、中国政府は、激増する高齢者人口にさらに頭を悩ませている。中国経済は大きく発展しているが、高齢者ケアの仕組みはまだ整備されておらず、海外からの投資の必要は急迫している。中国政府は、高齢者ケアサービスの経験のある外国企業による中国での老人ホーム開設を奨励しているだけでなく、高齢者ケアの進んだ管理経験と技術をこれらの企業から学ぼうとしている。
だがチャンスが多いことは課題が少ないことを意味してはいない。「カスケード・ヘルスケア」の北京と上海浦東の老人ホームの入居率は25%と30%にすぎない。「高齢者がすぐに押しかけてくるとは私たちも思ってはいない」とコロンビア・パシフィック創始者のダン・バティは語る。「我々の高齢者ケアの理念が受け入れられるにはまだ時間がかかる」
第一の課題は価格。徐匯区の施設を例に取ると、毎月の費用は1000ドルから4000ドルに達する。このような価格を受け入れられるのは中流上層階級以上の人だけだ。第二の課題は、専門の訓練を受けたケアテイカーの不足。第三の課題は、伝統的な考え方。中国社会では、親の代は子供の代が世話するのが一般的で、老人ホームに入居するのは普通、身寄りのない高齢者だけだ。
だが中国の中産階級が拡張する中、伝統も変化している。中国の産児制限政策も、高齢者を家族がケアするという伝統に圧迫を加えている。多くの家庭では高齢者ケアの重責が一人っ子の肩にかかる。コロンビア・パシフィックの中国でのヘルスケア業務の代表を務めるBee Lan Tanさんによると、「老人ホームに入るのは恥ずかしい」という従来の考え方は変わりつつある。「家庭の負担を減らし、子どもの力になることができる」と老人ホームへの入居を受け入れる高齢者は多い。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年1月17日