▽市場チャンスをつかみ損なう
カゴメ大陸部法人の倒産について、匿名の業界関係者は「理解できる」と率直な感想を述べる。カゴメが中国市場に進出した2005年頃、市場にはカゴメのような健康をコンセプトとしてうち出す高濃度のジュースブランドがなかった。だがカゴメは自社商品の品質に自信があり、「よい製品は必ず売れる」と信じて、市場での普及拡大に努めてこなかった。
カゴメは当時、日本の果汁・野菜飲料市場をほぼ独占していたが、中国の消費者はこの頃まだジュース商品に対する理解が十分でなく、カゴメの宣伝は不足気味で、商品の味も中国人消費者の好みに合っていなかったことから、大陸部の高濃度ジュース市場のチャンスをつかみ取ることに失敗した。
公開された資料によると、05年に中国市場に進出したカゴメは、「中国ジュース市場のトップになる」という壮大な志を胸に秘めていたが、現実には経営状況はそれほど楽観できるものではなかった。05~10年の5年間に売上高は伸びたものの、利益を上げるところまではいかなかったのだ。