全国で労働投入量が最も多い地域のひとつである珠江デルタでは、製造業が真っ先にロボットを大量導入し始めた。これに伴い、珠江デルタの各都市も、産業用ロボットの導入を支援する政策を相次いで打ち出した。広東省はこのほど、2015年から2017年の3年間で、一定規模以上の工業企業(年売上高2000万元以上の企業)1950社にロボットを導入することを宣言、大手企業で「スマート工場育成建設」の試行を行うほか、3年間で9430億元(1元は約19.3円)を投入し、産業技術改造に取り組む方針だ。
「人の代わりにロボットを導入」する主な原因となるのは、人件費の高騰だ。中国の人口メリットは徐々に失われつつある。改革開放初期には毎年1000万人あまりの労働力が誕生していたが、今後は総人口が変わらないという前提であれば、年間300~500万人の労働力が減少するというのが中長期の見通しとなっている。そのため、規模が大きく、労働力の需要が大きい産業では、ロボット導入は必然的な情勢となっている。
製造業では、産業用ロボットの大規模な導入は、人件費のためだけではない。CCIDコンサルティング設備産業研究センターのコンサルタント・張凌燕氏は、「ロボットの導入は、ハイレベル化・精密化・スマート化された製造方式の内在的な要求とも言える。ロボットはまた、煩雑あるいは危険な仕事、ルーティンワークから人類を解放するという歴史的使命も負っている」と分析する。
中国電科集団第21研究所の施進浩所長は「ロボットの導入は珠江デルタ、長江デルタなど、沿海の製造業が発達した省で目立っている。ここ数年のロボットブームおよび地方政府の補助金などの政策に後押しされ、製造業では今やロボット導入が常態化している。大企業のみならず、中小企業で生産ラインにロボットを導入するところも増えている。この現象は今後も間違いなく続くだろう」と語る。