世界の株式市場はこの1週間で大きく変動したが、多くの市場関係者は、「一時的」な変動であり、「新たな金融危機を招くものではない」との見方を示している。
しかしながら、今回の急激な市場変動で中国が演じた役割は軽視できない。海外では、「中国は日本の70年代初頭から歩んできたのと同じ道をたどり始めているのではないか?」との疑念が広がっている。日本は1973年の第1次石油危機の前に高度経済成長期を迎え、1951~1973年の22年間の経済成長率は平均8.8%程度に達したという。しかしその後、日本の経済成長は2度に渡り急激に失速する。第1次オイルショックの後、1974年の経済成長率は戦後初のマイナス成長に落ち込んだ。その後は安定成長期が続いたが、1993年のバブル崩壊後は実質「ゼロ成長」の経済停滞期に突入し、現在に至る。
日本がたどった道は「ジャパン・シンドローム(日本症候群)」と呼ばれる。日本の高度経済成長は、輸出主導型の成長スタイルと豊富で安価な労働力に支えられていたが、世界的に需要が減退し、安価な労働力が確保できなくなるとともに、経済成長は大幅に減速、国内の物価水準も低下した。「ジャパン・シンドローム」は日本だけではなく、東南アジアやその他の高度経済成長を経験した国でも発生している。
中国が目指す成長スタイルは以前の日本と似ているが、中国では日本を上回るスピードで高齢化が進行している。また、世界的な金融危機が発生すれば、その影響は73年のオイルショックを遥かに上回ると予想される。このため、中国が日本と同じ轍を踏まないか、「ジャパン・シンドローム」の二の舞とならないかという懸念が浮上するのも不思議ではない。