◇省エネインセンティブの確保
日本では、1973年の石油危機を契機に企業の省エネが進み、その後40年間でGDPが2.5倍に増加したのに対し、産業部門のエネルギー消費量は20%減少している。
省エネは、エネルギー価格が高いほど企業にとってインセンティブが生じるため、原油価格が下落している現在、省エネの停滞が懸念される。そこで、政府は、燃料価格や税の引き上げによって、省エネのインセンティブを維持するとともに、引き上げによって得られた財政収入を環境対策や再生可能エネルギーへの投資に充当することを検討すべきだ。
◇産業構造の転換
中国経済の持続可能な発展を図る上で、過剰生産設備を調整し、産業構造を転換していくことが大きな課題となっている。これは、環境保護の観点からも大いに重要であり、経済ニーズのみならず、地域の生態環境の容量を考慮した上で。供給量をコントロールしていく必要がある。
この点で、2013年から北京市と天津市では、エネルギーを大量に消費する発電所や工場を対象に、二酸化炭素の排出総量を規制する排出量取引パイロット事業が実施され、2017年からはこの制度が全国に拡大される予定である点に注目したい。二酸化炭素の排出を削減した企業は、他の企業に排出枠を売却することで経済的な利益が得られることから、制度を効果的に運用することで、過剰生産設備の廃止や、高効率設備への更新を促進することが期待される。
急激な経済成長によって、先進国が段階的に取り組んできた大気汚染と気候変動に同時に取り組なければならないことは中国にとって大きな試練だが、多くの対策が複数の課題の同時解決につながることから、後発の利益を得るべく取り組みを強化することが期待される。日中両国間では、このようなコベネフィットを実現するための協力プログラムが実施されており、北京・天津・河北地域の低汚染・脱炭素発展に貢献することを期待したい。
岡崎雄太:1999年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業、環境省(当時の環境庁)に入庁。2006年に米国ジョージタウン大学公共政策大学院で修士号を取得。環境省では、大気汚染、気候変動、環境経済政策の立案に従事。2010年から2013年まで、在中国日本国大使館で中国の環境政策の分析、日中環境協力の推進などを担当。2015年9月から上智大学地球環境学研究科准教授。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年3月5日