ルネサスエレクトロニクス(フラッシュマイコン製造メーカー。車載半導体で世界トップシェアを誇る)を例に挙げると、2011年の東日本大震災発生後生産停止を余儀なくされ、これを受けて名古屋から米アラバマ州の自動車工場までのすべてのサプライチェーンが寸断され、損失額は562億円に上った。しかし、同社は「過去の戒め」を胸に工場建築物の耐震強度を強化、今回の地震では熊本県内の工場は臨時閉鎖したものの、一定量の在庫が確保できたため運営が中断されることはなかった。地震が頻繁に起きる日本では、工場といった建築物の耐震強度の重要性が伺える。
中国社会科学院日本研究所日本経済研究室の張季風室長は、今回の地震が日本経済に与えた影響が同等規模の阪神淡路大震災より小さい理由について、日本のGDP総額に占める九州地方経済の割合が小さいという点以外に、今回の地震では建築物や社会インフラ施設の損害が比較的小さいという点にあると指摘している。
同等規模であった1995年の阪神淡路大震災を振り返ってみると、倒壊した建築物は千棟を数え、約5千人が地震発生後数秒以内に建造物の倒壊によって命を失った。焦点となったのはこうした建築物が1981年の建築基準引き上げ前に建てられたもので、81年以降に建てられたものには倒壊がほぼ見られなかったという点だ。