「中国経済が構造改革を行う中、日中両国の経済貿易協力でも新たなビジョンが求められる」。昆山で先日行われた第5回世界ビジネスリーダー大会において、日本貿易振興機構(JETRO)の上海代表処の所長である小栗道明氏は「新情勢下の日中経済貿易関係」と題した講演を行った。
小栗氏は講演で、現在の中国のGDPはすでに日本の2.7倍に達したものの、一人当たりのGDPは依然として日本の4分の1であり、全体で見れば発展途上国にあたると指摘。中国が構造改革を強く推し進める中、日中両国の経済貿易協力には新たなビジョンが求められると述べた。小栗氏は「現在の日本が中国を見るとき、まるで隣家の男の子が突然、背の高い若者に成長したさまを見たような気持ちになる。多くの日本人がその変化に慣れていない」と、興味深いたとえで現状を表現した。同氏は、日本は隣家の青年が成長した現実を冷静に受け止め、同時に喜ぶべきだとの考えを示した。また、隣家の青年は急激に背が伸びたものの「筋骨はそれほど強くなっていない」。だからこそ、新情勢下における新たな日中経済貿易協力関係が求められるとした。
日中経済貿易協力の将来は、中国政府が打ち出した「五大発展理念」をうまく把握することにあると小栗氏は述べる。この理念で中国はまず匠の精神を挙げている。日本には百年あるいは千年続く企業が多数存在する。これらの企業はみな匠の精神を極限まで突き詰めており、大胆なイノベーションを起こしながらも伝統を維持している。イノベーションを起こす主体は企業にあることから、中日両国の企業間交流の強化を同氏は提案した。