2008年の国際金融危機の後、世界の製造業の成長は明らかに緩まった。だが総体的な低成長を背景としながら、各国の状況には分化が生じた。先進エコノミーの製造業の成長率は、危機の前から大幅に低下した。例えば米国の製造業の成長率は2007年の3.3%から2014年の1.7%に低下し、日本は6.0%から1.5%、ドイツは4.4%から1.7%に低下した。だが一部の新興市場と発展途上国の製造業はこうした流れに逆行して成長を実現した。例えばフィリピンやカンボジア、マレーシア、カメルーン、メキシコなどの国の製造業の成長率は、危機前の水準を超えている。ポーランドやチェコ、ハンガリーなどの国の製造業成長率は危機前の水準には達していないものの、高成長の傾向を示している。
こうした成長率の違いによって、世界の製造業に占める新興市場と発展途上国の割合は危機後、明らかに高まっている。世界の製造業の付加価値に占める高所得国以外のアジア太平洋地域の割合は、2007年の15.8%から2013年の28.2%にまで高まり、中国の製造業の割合は12.5%から24.1%、インドの製造業の割合は2.0%から2014年の2.5%に高まった。世界の製造業にはこれを土台に新秩序が生まれており、これには次の3つの特徴が見られる。
第一に、中国の製造業のミドル・ハイエンドへの発展が加速している。金融危機後、中国の経済と製造業の成長率は低下したものの、産業のアップグレードが加速し、産業構造は明らかに改善した。2015年、中国のGDPに占める研究開発費の割合は2.1%に達し、先進エコノミーの水準に匹敵するようになった。SCI・EI収録誌への論文発表数と発明特許の認可数はいずれも世界のトップレベルとなっている。「メイド・イン・チャイナ」は、高速鉄道や建設機械、通信設備などの産業で世界トップの仲間入りをしただけでなく、人工知能や次世代インターネット、量子通信などの新興技術分野でも後発者ながら他国をリードする実力をつけつつある。
第二に、発展途上国と新興市場国に国際直接投資が集まるようになった。発展途上国のインフラの絶え間ない改善に伴い、その低コストの労働力の優位性が明らかとなり、繊維や衣類などの労働集約型産業と情報技術産品の加工・組立などの労働集約型業務はこれらの国々への移転を加速している。2007年から2014年までに、世界の国際直接投資のフローに占める発展途上国(中国を除く)と新興市場国の割合はそれぞれ、26.9%と31.7%から51.4%と53.2%にまで高まった。
第三に、先進国は技術の先端分野において依然として優位を保っている。先進国による「再工業化」と製造業の国内回帰促進の実際の効果は明らかではない。例えば米国では、製造業付加価値額がGDPに占める割合は2008年、前年から0.5ポイント下がって12.3%となった。金融危機後は基本的に12.3%の下で変動しており、力強い発展の傾向は見られない。だが先進国の製造業の比較優位は大きくは変わっていない。米国による製造業再興の重点は依然としてその科学技術と人才の面での強みにあり、米国は今後、人工知能や3D印刷、仮想現実、生命科学、新材料などの新興技術の開発と産業化を加速し、新たな産業競争での有利なポジションの獲得をはかっていく見通しだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年10月15日