一連の問題を起こした企業が次々に現れたことが映し出す根本的な問題は、長年にわたり日本の製造業の強さを支えてきた社会の基盤が崩れつつあることだ。第1に、20世紀に日本で生まれ発展した企業家精神が徐々に消え失せ、松下幸之助、盛田昭夫、本田宗一郎の各氏のようなリーダーを最近はほとんど見かけなくなった。日本の製造業は全体として攻めから守りに転じている。
第2に、日本のかつて世界を率いた生産組織モデルも時代遅れになった。一時期輝きをみせたリーン生産方式は米アップル社のビジネスモデルの破壊的な攻撃を受けている。またモノのインターネット(IoV)や人工知能(AI)といった新技術革命が新しい生産モデル革命をはぐくみつつあり、こうした新情勢は技術のガラパゴス化という過ちから脱出したばかりの日本企業にとって新たな課題になっている。
第3に、日本企業の全体的な基礎研究レベルも低下を続け、この分野は人材が不足し、大学も企業もすぐに利益には結びつきにくい基礎科学に経費を出したがらなくなり、基礎研究に従事する若い人材がますます減っている。