スポーツ産業の投資は近年快進撃を続けており、数億規模の投資も珍しくないが、消費側からは都合の良くないデータが出ている。江蘇・上海体育局の統計によると、この中国で最も豊かな2つの地域における2017年の1人平均スポーツ消費額は前者が2000元ほど、後者が2500元未満だった。これは江蘇省と上海市の有名料理店の平均的な年越し料理の価格に相当する。
中国はすでに、スポーツ消費が急成長するGDP1人あたり8000ドルという通過点を過ぎたとされるが、期待されているスポーツ産業の急成長はまだ到来していない。
理由はそれほど複雑ではない。頻繁に運動する人は中国人のうち33.9%(4億2000万人)と大きな規模を形成しているが、高齢者と子供に偏っており、全体的に見るとスポーツのため出費しようとする意欲が弱い。日常的に公園や道端で運動するおじいさんに必要なのは、一足の運動靴だけかもしれない。
しかし変化は生じており、その勢いも強い。ATP上海マスターズ、FI上海GPなどのスポーツイベントを主催する上海久事体育集団の姜瀾会長は「マラソンが活況を呈しているが、これは産業の急成長の序曲、前奏だ」と判断した。
都市部の多くの会社員にとって、自宅と会社の間にフィットネスジムが加わっている。シューズ、会員料、プライベートレッスン、低脂肪の食事が徐々に標準スペックになっている。多くの人の運動意識が高まっている。都市部と農村部の所得やインフラなどの格差縮小に伴い、スポーツ消費には成長の余地が生まれている。
経済成長鈍化の圧力を受けながらも、スポーツ産業は近年この流れに逆らい成長している。2017年の総規模は前年比15.7%増の2兆2000億元、付加価値は20.6%増の7811億元で、GDP成長率を大幅に上回っており、かつ付加価値の対GDP比が初めて1%を上回った。この成長率を見ると、スポーツ産業の総規模を2025年まで5兆元にする目標は容易に達成できる。
天津財経大学商学院教授で、屋外レジャー産業を研究する梁強氏は次のように見ている。中国社会の中堅勢力である若者と中年の多くがまだ運動技能を持っておらず、運動を開始したばかりの人が多い。これは青少年時代の「補習」のようなもので、先にランニングからスポーツのブームに火がついた理由だ。ランニングはハードルが最も低く、運動の基本的な能力に属する。ところがそれであっても、スポーツ消費を強くけん引している。今後の運動技能の向上により、スポーツ消費がさらにアップグレードする。
スポーツ消費人口の数は、スポーツ産業・市場の規模を決める。注目すべきは、子供がスポーツを楽しめば、一家全体のスポーツ消費を激増させることだ。都市部の1970年・80年代生まれの保護者の多くが、子供に運動技能を身に着けさせようと熱心だ。中所得層が子供のスポーツに費やすお金は、ピアノや数学を上回る勢いだ。
万国体育の張涛CEOは、練習経験を持つこれらの子供は、未来のスポーツ消費人口になると判断した。彼らはより専門的で細分化された用品とサービスに触れ、より頻繁にスポーツ消費を行い、スポーツ消費のアップグレードを実現する。
スポーツ産業に詳しい強煒氏は、国は2014年末になり初めてスポーツの「産業」としての性質の重視を始め、政策によるけん引効果は近年非常に顕著になっていると指摘した。ただしスポーツ産業の急成長は、1世代さらには2世代の蓄積が必要かもしれないという。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年1月10日