日米貿易協定交渉の範囲、議題、タイムテーブルをめぐる議論には、実は交渉の主導権争いが反映されている。交渉において、主導権は実力だけで単純に決まるものではなく、「交渉の設計図」が最も重要な役割を発揮することが多い。具体的には、何を交渉するか、どうやって交渉するか、最終的にどのような方法で交渉を妥結されるかなどの設計図だ。米国はまず範囲を確定するよう主張し、農業、サービスなどを網羅する一括型の自由貿易協定(FTA)を目指す。ムニューシン米財務長官は、「日米貿易問題を含め、両国経済関係などの幅広い議題をカバーする必要がある」と強調する。日本は自動車や農業などの物品貿易に限定する方針を堅持し、弱点分野を回避し、日本企業の競争力を確保しようとする。
米国の農務長官や財務長官は交渉が米国の意図する方向へ発展するよう推進するため、交渉に先だって「場外から圧力をかける」とたびたび発言。農務長官はまず農産品関税協定を結び、TPP11と日EUのEPAの発効によりもたらされた米農産品の競争力低下を解消しようとし、財務長官は「為替条項」の導入が必要であると強調した。トランプ大統領のしかける貿易戦争に対し、日本が最も懸念するのは米国が「米国・メキシコ・カナダ協定」(USMCA)の「通貨条項」と「数量制限」、さらには「労働基準」を援用することだ。特に金融危機から10年が経ち、米日欧の量的緩和政策は撤退問題に直面している今、「円高」は「付随して発生する副産物」になりかねない。円の過剰な値上がりをどのように抑制するか、日本政府の政策が試される。同時に米国もドルの過剰な値上がりをどのように是正するかの問題に直面する。明らかなことは、相手に制約を加える「為替条項」が、米国が通貨の覇権を行使するためのゴーサインに有利に働くということだ。
タイムテーブルをどのように設定するかは、交渉のペースに関わってくる。日本は即断即決で、余計な問題が生じないようにしたい考えだが、昨年9月に交渉が確定してから、交渉開始のチャンスをなかなか見つけられなかった。ここには米国の「貿易戦争後の体制」における日本の優先順位の低さ、地位の低下が映し出されている。米国は元々は早期妥結を願い、来年の大統領選に有利に働くことを狙っていたが、中米交渉の出口が見えず、大統領選挙が迫ってきたことを踏まえ、日本との間で急いで安直な協定を結んでも幅広い利益への要求には答えられないと判断した。またTPPがたどった道のりを教訓として、大統領選挙の前に交渉を妥結するより、選挙戦の期間に全面的交渉を進める方がよいと判断した。この交渉が最終的に日米貿易協定交渉への格上げの序章になるかどうかは、今後の行方をみなければわからない。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年4月18日