文=中国商務部研究院 霍建国前院長
コロナ禍によって物流とサプライチェーンは中断し、外資系企業の中国での経営活動は一時ダメージと影響を受けた。加速する「逆グローバル化」や「サプライチェーンの回帰」「サプライチェーンの移転」、特に一部の米政治家が騒ぎ立てる極端な米資企業の中国撤退論、徐々に導入されている投資の保護主義的政策――こうしたことが中国の外資系企業の自信喪失につながっている。
コロナの衝撃は国際資本の流動の規模、ルール、方向にある程度の変化を及ぼすだろう。これは中国に限ったことではなく、世界的な現象といえる。ただ、総合的な生産要素のコスト、産業構造、市場規模などの条件からいっても改革開放の深化、ビジネス環境の改善など主観的な努力からいっても、外資系企業にとって中国に大きな魅力があることは変わりない。
まず、米系企業の中国からの撤退という米政治家の思惑ややり口は市場経済の基本原理だけでなく、社会生産力の進歩という客観的法則に反しており、米系企業の進退に難しい選択を迫ることになる。グローバルサプライチェーンの構造は主に労働コスト、関税水準、非関税の壁、産業支援体制といった要素の影響を受ける。グローバル企業がそれぞれの国や地域に投資するのは、より良い資源の最適化、利益の最大化を図るためだ。
中国は特定の歴史的条件から世界の製造の中心となった。それを何らかの糸で変えるのは難しいだろう。70年代以降のグローバル化と市場開放でグローバル企業を主軸とする海外投資が西側諸国の経済の構造調整や産業の底上げを促し、アジア、特に中国を筆頭に多くの新興国がそのチャンスをつかみ、中国を中心とした東アジアは世界の製造の中心という地位を手に入れた。その間、中国が強みにしたのは効率と競争力で、その根本は今でも変わっていない。
次に中国はすでに世界大規模の製造業を有し、業界全体の工業体制が中国貿易の国際競争力を支える重要な源泉となっている。この点を短期間で覆すのは難しい。