米フォーリン・ポリシー誌(電子版)は27日、感染症により雇用が中国から米国に回帰することはないとした。記事の要旨は下記の通り。
トランプ大統領の「米国ファースト」の理念の軸となっているのは、雇用の回帰だ。トランプ氏は大統領に当選した際に「雇用を取り戻す」と約束した。
それから3年以上がたち、感染症の大流行により米国人10万人が死亡し、かつ大恐慌以降で最も多くの雇用が失われるとはまったく想定されていなかった。トランプ政権はついに、機会到来と判断した。ライトハイザー米通商代表は今月、コロナ大流行の破壊により米国企業は選択肢を失い、「雇用機会を米国に戻す」しかないと述べた。同じくロス米商務長官は1月(感染がまだ中国に限られていた時期)に、これが「雇用の北米回帰の加速を促す」と表明していた。
鉄及びアルミの関税導入、カナダ及びメキシコとの北米自由貿易協定の再交渉、中国との貿易戦争といった米政府の貿易関連の象徴的な行動は米国企業に対して、生産を米国に戻すことを考えさせた。2018年1月以降、米国が中国製品にかける関税の平均値は3.1%から20%弱に上がっている。
しかしこれらの取り組みはトランプ氏やその他の人々が望むほど奏功しているのだろうか。「米国ファースト」貿易政策の壊滅的な結果はさておき、この取り組みには2つの大きな欠陥がある。まず、貿易戦争と新型コロナが企業に製造業の米国への大規模な移転を迫る可能性は低い。次に、自動化の推進に伴い、企業が回帰しても米国人に高賃金の仕事をもたらす可能性は低い。
貿易戦争が3年続いているが、関税により多くの米国企業が中国から生産を移転していなければならないはずだ。ところが感染症により、企業が事業を米国に戻そうと急いでいるという証拠は何らない。感染症が発生する前に、多くの企業がサプライチェーンを見直し、関税の負担を回避しようとしていた。ところが彼らはほとんど生産を米国に戻さなかった。最も全面的なデータによると、貿易戦争の勝者は東南アジア諸国、特にベトナムとなっている。データを見ると、企業が生産を米国に戻す動きはない。
経営コンサルティング会社のA.T. カーニーが発表した最新の「回帰指数」を見ても、米国の製造業の復活を示す傾向はまったくない。むしろA.T. カーニーは、貿易戦争により米国が中国からの輸入を大幅に減らしたことに目をつけている。中国からの輸入は2018−19年に17%減少した。失われた部分の半分は、その他のアジア諸国及びメキシコなどによって埋められた。全体的に見ると、中国の製造業からの輸入は900億ドル減少し、メキシコからの輸入は130億ドル増加した。ベトナムなどの低コスト調達を提供するアジア諸国からの輸入は310億ドル増。
新型コロナの大流行によりこの変化が加速する可能性は高いが、米国人が高賃金で安定した雇用を取り戻す日が訪れることはあるだろうか。これは「米国を再び偉大に」というノスタルジーに基づく独りよがりな考え方だ。
製造業は以前ほど米国の労働力を左右する条件にはなっていない。1970年の当時、米国人4人中1人が製造業に従事していたが、現在は10人中1人未満だ。企業が米国で製造業を拡大する場合も、その新しい工場は高度に自動化されている。今回のパンデミックは自動化の流れを早める可能性がある。
ともかく、一部の製造業は感染症により米国に回帰する可能性があるが、雇用率の増加はおそらく微々たるものだ。しかもこれが米国の労働者の生活を変えることはない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年5月30日