ネット有名人の阿曼達·謝(音訳)さんのところにTiffanyのオファーが届いたとき、彼女は戸惑いを隠せなかった。「割引もないし、実店舗の体験も提供できない。正直に言って、ライブによる高級品販売に自信がない」と話す彼女だが、ライブ販売でTiffanyのネックレスを300点も売りさばいた。ライブ視聴者は5000人以上で、小さな都市の富裕層の女性がメインだそうだ。英紙「フィナンシャル・タイムズ」が伝えた。
感染症の影響を受けて一時閉鎖されたブランド品店は多く、営業再開後も低迷が続き、Lanvin・LVなどのブランドは中国でライブ販売を開始した。中国最大のブランド品を集めた北京のSKPショッピングモールが営業を再開したが、店員によると、北京の感染症のぶり返しにより消費者の足が止まり、客足は感染症発生前の半分に留まっているという。
中国でネット有名人のライブ販売は巨大な成功を上げ、各ブランドがその波に乗ろうとしている。投資機構のJEFのデータによると、2019年の高級品売上高2810億ユーロのうち、中国消費者は増加額に8割、総額に4割貢献した。69万3000人のファンを擁する上海のネット有名人の喬・孫さんは、3時間のライブ販売でGUCCI・CHANEL ・LVなどのブランド品を含む70-80点の総額100万元以上の商品を売りさばいた。あるブランド品店の店長は、北京や上海の業績トップの実店舗でも、1日の売り上げは50万元から70万元に過ぎないとした。
中国でブームとなるライブ販売。これを無視する企業はもはやない。感染症がライブ販売の追い風となり、ショート動画共有アプリ「快手」のオンライン店舗数は昨年末の5000万店未満から現在は1億店以上に急成長した。ライブ販売商品は500gあたり30元の「鴨脖(鴨の首を燻製にした食物)」もあれば、37万元のHERMESのバッグもある。
デジタル販売機構・彦祖文化の創設者の朱亮氏は、ライブ販売は小さな都市の住民に特に魅力的だとみている。ブランド品消費においてますます重要性が増す彼らだが、ブランドについての知識は少ない。テレビの30秒のCMにしても、1ページの雑誌広告にしても、ブランドの詳細を紹介することは無理である。しかし30分のライブ販売の場合、話は別である。
ところが、割引を目玉とするライブコマースは、ブランド品が求める排他性と高価格に違和感を覚える業界筋もある。「損を出しても値引きはしない。値引きはブランドのイメージを傷つけるからだ」とYSL上海のある営業部長は話している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年6月29日